デジタル変電所におけるマージングユニット(MU)が簡易BCU機能を持つ必要が出てきた背景には、技術・運用・コストの3つの側面から明確な理由があります。以下で順を追って整理します。
背景:IEC61850の進化と構成の変化
● 従来構成
従来のデジタル変電では、
MU(Merging Unit):CT/PTからアナログ信号を取得し、サンプリング値(SV)をステーションバスに送信
BCU(Bay Control Unit):開閉器の操作・状態監視・GOOSE通信を担う制御IED
という明確な分業構成でした。
● 問題点
しかしこの構成では:
・MUとBCU間でGOOSE通信が必須(試験や同期が煩雑)
・MU・BCU間でケーブル配線が多く、盤内スペースが逼迫
**少数回路(例:単一遮断器回路)**でもBCUを別置きする必要があり、コスト・工数増加
といった非効率が顕在化していました。


技術的な制約でただのフィールドネットワークと大差ない時代があったということですね。
あと上の図ですがGOOSE通信の経路に関しては少し省いて描いてます。
ご了承ください。
技術的背景:プロセスバスの成熟
IEC 61850-9-2LEおよびIEC 61869-9対応MUの普及により、
サンプリング同期精度(μsオーダ)
時刻同期(PTP/IEEE1588)
耐ノイズ性能・CPU性能の向上
といった要素が改善され、MU自体がロジック演算や入出力制御を一部内包可能となりました。
このため、MU側で簡易的な制御ロジック(開閉・状態保持)を処理できる技術的土壌が整いました。
運用・設計上の要求
近年のサブ変電設備・配電盤(特に再エネや小規模変電設備)では:
ベイ単位が小規模化(回路数が少ない)
工期短縮・現地調整削減の要請
盤内スペース削減・ワイヤリング最小化の要請が強く、MUとBCUを別々に置くメリットが小さくなりました。
このため、「MU側に簡易BCU機能を統合し、1台で完結」というニーズが増加しました。
コスト・メンテナンス面の背景
● コスト削減
機器点数削減(MU+BCU → 1台)
配線・試験・盤内設計工数の削減
スペース削減により盤サイズ小型化 → 盤製作コスト減
● 保守容易化
IED台数が減ることで保守対象が減少
ファーム更新・ロジック変更範囲が縮小
機能試験も一体で完結
標準化・サプライチェーン面の流れ
主要ベンダ(ABB, GE, Siemens, NR Electricなど)は、
プロセスバス+ベイレベル融合アーキテクチャを推進中です。
これにより:
“Smart MU”, “Integrated MU/BCU”, “Process Interface Unit (PIU)”といった製品群が登場
一部では保護IEDの簡易バックアップ制御までMUに含める方向性も。
国内勢も、**将来的な盤統合設計(デジタルベイ)**を視野に、「BCU分離前提」から「統合型MU」の採用を模索し始めています。

これから技術の進歩でかなりの機能が統合された
構成になると思われます。
楽しみでもあり、大変そうでもあり・・・・


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