― 電圧変化の大きさと“検出できるか”は別問題である ―
電力系統の地絡検出について議論するとき、よく聞くフレーズがあります。
「非接地系は電圧変化が大きいから感度が良い」
一見もっともらしく聞こえますが、実務の現場に立つとこの理解には違和感を覚える場面が多くあります。
特に、データセンターや特別高圧受変電設備の設計に関わる方であれば、
「本当にそれで確実に検出できるのか?」
「誤検出や見逃しは起きないのか?」
という視点が強くなるはずです。
本記事ではこのテーマについて、
👉 「電圧変化の大きさ」と「検出の確実性」は全く別物である
という観点から、非接地系と抵抗接地系を実務目線で深掘りしていきます。
非接地、抵抗接地以前に受変電設備とは?という方。受変電設備の全体像を知りたい方は以下をどうぞ。
非接地系が「感度が良い」と言われる理由
まず、なぜ非接地系が“感度が良い”と評価されるのかを整理します。
非接地系では、1線地絡が発生すると以下の現象が起きます。
- 地絡相の対地電圧:0V近傍
- 健全相の対地電圧:√3倍に上昇
この結果、
👉 零相電圧(3V0)が大きく発生する
という特徴があります。
この“電圧変化の大きさ”だけを見ると、
- 小さな地絡でも検出できそう
- 変化が大きい=感度が良い
と評価されがちです。
しかし、ここに大きな落とし穴があります。
非接地は電圧が大きくても「検出できる」とは限らない
非接地系の本質的な問題は、
👉 検出信号が「安定して再現されない」ことにあります。
●問題①:地絡電流がほぼ流れない
非接地系では接地されていないため、地絡電流は対地静電容量電流のみ(数A以下)となります。
つまり、👉 電流ベースの検出(ZCT・51Gなど)はほぼ成立しない
これは実務上かなり大きな制約です。
●問題②:電圧変化が“条件依存”である
非接地系の零相電圧は、
- 系統の対地静電容量
- 不平衡
- 外乱ノイズ
といった要素に大きく影響されます。
そのため、
- 明確に出る場合もあれば
- 微妙にしか出ない場合もある
つまり👉 再現性が低いという問題があります。
●問題③:異常が継続してしまう
非接地系は1線地絡では
- 系統は停止しない
- 運転が継続される
これは一見メリットですが、
👉 異常に気づかないまま運転が続くというリスクを孕みます。
結果として、
- 地絡の長期放置
- 2線地絡への進展
- 重大事故化
というシナリオに繋がります。
■抵抗接地系はなぜ“感度が鈍い”と誤解されるのか
一方で抵抗接地系は、
- 地絡電流を意図的に制限(例:10A)
- 電圧上昇も制御される
ため、
- 電流が小さい
- 電圧変化も控えめ
という理由から、
👉 「感度が鈍い」と誤解されることがあります。
しかし、ここでも重要なのは“絶対値”ではありません。
本質:抵抗接地系は「設計された信号」を出す
抵抗接地系の最大の強みはここにあります。
👉 地絡時の挙動が“設計通りに再現される”
●地絡電流が設計値で流れる
例えば10A接地系であれば、地絡時には約10Aが確実に流れる
👉 電流検出が成立する
●零相電圧も安定して発生する
抵抗を介して接地されているため、零相電圧(3V0)も明確に発生
👉 電圧検出も成立する
●電圧+電流の両方が使える
これが非接地系との決定的な違いです。
EVT(3V0) → 地絡の発生検出
ZCT(Io) → 回線特定・選択遮断
👉 検出と選択を両立できる
“感度”の定義を間違えるな
ここまでを整理すると、重要な結論が見えてきます。
●非接地系の感度
電圧変化:大きい
しかし:不安定・再現性が低い
👉 理論的には敏感だが、実務では扱いにくい
●抵抗接地系の感度
電圧・電流:制御された値
再現性:高い
👉 確実に検出できる“実用的な感度”
実務で重要なのは「確実性」
電力設備において重要なのは、
👉 どれだけ大きな信号が出るかではなく、
👉 どれだけ確実に異常を検出できるか
です。
非接地系は、大きな変化が出ることもあるが出ない場合もある
一方、抵抗接地系は、適切な大きさの信号が必ず出るように設計されている
まとめ
👉「非接地系は“電圧変化が大きい=感度が良い”と誤解されがちだが、実務で重要なのは“確実に検出できるか”であり、その点では抵抗接地系のほうがはるかに優れている。」
あとがき
重要インフラにおいて、近年抵抗接地系が主流になっているのは偶然ではありません。
それは、
- 壊れにくさ
- 検出の確実性
- 選択遮断のしやすさ
という現実的な運用要件に最適化された結果です。
もし設計段階で
「非接地系のほうが感度が良いのでは?」
「抵抗接地にすると鈍くなるのでは?」
という議論が出た場合は、ぜひこの視点を思い出してください。
👉 “感度”ではなく“確実性”で判断すること
これが、現場で失敗しないための重要な考え方です。
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