IEC61850とは
従来の変電所は装置間の通信で使用するプロトコルが標準化されておらず、各々の設備で多種多様な通信プロトコルを採用していた。それにより設備間の相互運用性(複数のシステムや組織が連携して情報交換や通信を行うこと)が実現できていなかった。
そのため系統間の運用に問題があり、連携不備による停電が起こる事例があった。(日本国内では装置間の通信を、ベンダー独自のプロトコルで他社の参入障壁とされることを嫌う風潮があったためメタルケーブルでの設計が指定されていることが多い)

事例1:2001年カリフォルニア電力危機 発電業者と送電業者間の需要と供給の不整合が原因の電力不足 結果として停電が頻発した。(この危機による損失は400〜450億ドルと言われている)
事例2:2003年 イタリア大停電 2003年9月28日、イタリアではシチリアを除くほぼ全域で大規模な停電が発生した。スイスのウルミベルグ山稜で高圧線に樹木が接触して過負荷が生じて、スイスからの送電が停止したことが直接の原因である。「2003 Italy power outage」でググると当時の様子を見ることができます。
上記の事故はいずれも国対国、電力会社間の制御通信と運用機能の不備(インターフェースの不備)から電力不足→停電が発生している。
電力系統構成機器の相互運用性を確保するため、システム間のインターフェースの標準化(通信仕様の標準化)するために策定された。IEC 61850 は通信のみでなくプロセスバスの要件と仕様も定めている。
IEC61850に則ってシステム構築をすることで、インターフェースの標準化を実現させるてメタルケーブルが削減させることができる。これによりメタルケーブルの削減により施工・保守・出荷前試験業務の省力化や、省配線による環境負荷低減ができる。

監視制御装置、保護リレー装置のことをIEDという。1990年代からCPU技術の進歩により、実用化が図られている。バスを介してSCADAやSASと通信を行い,バスを介してMU や RIO とも通信を行い開閉器の開放投入指令を行う。
CBC : Circuit Breaker Controller
IEC 61850を適用した装置と装置の間で受信ができるデータに変換するための装置
MOXAや第一エレクトロニクスでラインナップあり。
計器用変成器の2次側から取り込んだ電流・電圧情報をディジタル化し、プロセスバスを通して保護IEDやBCUにデータを送信する装置
C-GISに組み付けて出荷することで出荷完成度の向上に寄与できる。
iMu : Intergrated Merging Unit
SGC : Switcgear Controller
BCU : Bay Controlling Unit
ただの省配線プロトコル規格ではない
IEC61850で重要なのはただの省配線プロトコルではない。IEC61850でシステム構築することにより、今まで達成できていなかったマルチベンダ化が達成できるという点である。
IEC61850はエンジニアリングの標準化・省力化を目指した規格になっており、DX推進の機運と相まって国内外ともに導入が進められている。
既存の変電所よりもCAGR(年平均成長率)が大きく、将来的にはIEC61850適用のデジタル変電が主流になると考えられる。言い換えれば既存の受配電設備ばかりの設計をしていると、気づいたときには市場から取り残されるということになる。
※IEC 61850は通信仕様だけの規格だけではない。適用システム(変電所,風力発電,火力発電)毎に,実現プロセス(設計・ハード・試験方法)を標準化し、システム間接続性・異メーカ機器混成システムの実現性(マルチベンダ化)を高める規格である。(逆を言えばIEC61850適用のシステムを構築できない者は参入ができない。)

日本国内でのIEC61850導入事情
日本国内ではJIS、JEC規格の適用及び電力の安定供給が実現できていたため、導入が遅かった。しかし2011年3月の東日本大震災や電力自由化、経産省のDX推進などで機運が高まり導入が進んでいる。
IEC61850で構成した電力会社のフルデジタル特別高圧変電所は、ケーブル更新工事費だけでも数億円規模のコストダウンが期待できる。すでに訪れている人手不足、変電所の老朽化による更新需要の増加、経産省のDX推進などへの対策として期待されている。


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