発電所と変電所の中性点の接地方式
最近仕事の関係で強電分野もやるようになったので、勉強のため中性点の接地方式の種類と特徴に関して簡単に取りまとめます。電験でも電力分野での出題率が高いので覚えて損はありません。
発電所と変電所の中性点の接地方式の種類は大きく4種類あります。
- 直接接地方式
- 消弧リアクトル接地方式
- 抵抗接地方式
- 非接地方式
これらの効果と目的を以下にまとめる
- アーク地絡による異常電圧の抑制
- 対地電圧の低下による経済的な絶縁設計
- 地絡事故の際の保護継電器の確実に動作させて、故箇所を迅速に除去
直接接地方式
中性点を導体で接地する方式である。一線地絡時の健全相の電圧上昇が常時とほとんど変わらない。これは接地抵抗値がほぼゼロのため、中性点電圧がほとんどゼロで動かないためである。これにより線路や機器の絶縁が低減できる。(がいし個数を減少させることができる)
これらの特徴から建設費がやすくなり、保護継電器の動作が確実になるが一線地絡電流が接地方式の一番高くなる。それにより地絡した際の電磁誘導障害が大きい。220KV以上の超高圧線路に使用されている。

- 220KV以上の超高圧線路で使用
- 1線地絡電流:最大
- 1線地絡時の健全相対地電圧:小、常時と変わらない
- 高低圧混織ジの低圧線電位上昇:最大
- 1線地絡時の通信線電磁誘導障害:大
消弧リアクトル接地方式
送電線路の対地静電容量と共振するリアクトルで中性点を接地する方式である。変圧器の中性点をインダクタンスで接地して、一線地絡したときに発生する地絡点のアークを消滅させる。(送電線の地絡事故の中で一線地絡事故が1番多い)これにより故障回路を遮断させること無く送電を継続させる。また地絡による通信妨害も中性点接地方式の中で一番小さくできる。主に77KV以下の線路に使用される。

- 77KV以下の線路で使用
- 1線地絡電流:最小
- 1線地絡時の健全相対地電圧:大
- 高低圧混織ジの低圧線電位上昇:最小
- 1線地絡時の通信線電磁誘導障害:小
抵抗接地方式
変圧器の中性点に抵抗を通して接地する方式である。地絡電流を100〜300Aになるように定める。保護継電器の動作が直接接地の次に確実に行える。150KV級の線路に使用される。

- 150KV級の線路で使用
- 1線地絡電流:中
- 1線地絡時の健全相対地電圧:中
- 高低圧混織ジの低圧線電位上昇:中
- 1線地絡時の通信線電磁誘導障害:中
非接地方式
中性点を接地しない方式である。電圧が高く、こう長が長い線路では一線地絡時に異常電圧を発生する。主に33KV以下の線路で使用されている。
ちなみに日本では高圧配電線路は非接地方式が多い。それは一線地絡時に健全相対地電圧が√3倍の線間電圧に上昇するが、線間電圧が上昇しても電圧が低いので問題にならない。さらに地絡電流と誘導障害(通信障害)が小さいなどのメリットがあるためである。
高圧配電線路は非接地方式が多いが、一線地絡時に異常電圧が高くなる場合は接地方式を非接地から抵抗接地に変更を検討する必要がある。
異常電圧が高すぎると機器の破壊を招くためである。(最初の項に記載した対地電圧の低下による経済的な絶縁設計を行うため)絶縁協調の観点からも高圧配電線路であっても抵抗接地採用の検討が必要なことが多いので注意のこと。

- 33KV以下の線路で使用
- 1線地絡電流:小
- 1線地絡時の健全相対地電圧:大
- 高低圧混織ジの低圧線電位上昇:小
- 1線地絡時の通信線電磁誘導障害:小
- 6.6KV系統の構内配電線路の総長が長大になる際は、静電容量の値を確認のこと
中性点接地方式の比較表

二線地絡、三線地絡という言葉がない理由
一般的に地絡事故と言うと一線地絡事故のことを指す。
これは複数線で異物接触によって同時地絡した際は異相地絡という。
異相間の地絡は短絡現象に移行しやすい。そのため動作する継電器は短絡電流保護継電器OCRが先に動作するためである。
そのため二線地絡や三線地絡は「地絡事故」という事象ではなく、短絡事故という事象として起こる。一般的に地絡事故は「一線地絡事故」のことをいう。
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