インターネットデータセンターとは

インターネットデータセンター(IDC)は、一言でいえば「インターネットにつながるサーバやネットワーク機器を、安全に・止めずに・高速に動かすためだけにつくられた専用の建物・設備」です。

日本データセンター協会の定義でも、インターネットや電話などの通信設備を集中的に置き、耐災害・セキュリティ・電源・空調を整えた施設、とされています。特にインターネット接続に重きを置いたものをIDCと呼ぶ、という言い方が日本ではよく使われます。

IDCは何をしている施設か

IDCがやっていることはだいたい次の4つです。

サーバを置く「場所」とインフラを提供

・地震・火災・浸水に強い建物

・無停電電源装置(UPS)、非常用発電機、2系統受電などの電源二重化

・大容量で冗長な空調・冷却

・ラックやケージで区画されたサーバ置き場

これらはユーザー企業が自社ビルでやるとかなりコストと手間がかかるので、IDC側がまとめて面倒を見る、という構図です。

インターネットや各キャリアへの“太くて短い”接続を提供

IDC内には複数の通信事業者・IXが入っていて、遅延の少ない経路を取れます。だから「インターネットデータセンター」。�

ウィキペディア

運用・監視の代行

24時間365日の監視、障害通報、リモートハンド(現地で電源を抜き差ししてくれるなど)。

(上に乗るサービスとして)クラウドの土台になる

よく「データセンターとクラウドは何が違うのか?」と聞かれますが、

データセンター=物理的な場所+電源+ネットワークの箱

クラウド=その箱の中で動く仮想サーバ・ストレージなどのサービス

という関係です。クラウド事業者(AWS, Azure, Google Cloud など)も中身は巨大なデータセンターの上で走っています。

世界的にデータセンターが増えている主な要因

2020年頃から世界のDC市場は年10%前後のペースでふくらんでいて、2020年の約499億ドルが2028年に1,100億ドル超に達する見込みという推計も出ています。これは“ちょっと増える”ではなく“構造的に増える”伸び方です。�

背景を分解するとこうなります:

DBJ

クラウドとSaaSの普及が止まらないから

企業システムがオンプレからクラウドに移ると、処理がクラウド事業者のDCに集中していきます。クラウドが伸びれば自動的にDCが増える構造です。�

新電力ネット

生成AI・LLM・高速学習用のマシンが電力も面積も食うから

2024〜25年の報告では、AI対応DCの電力需要は2030年に現在の2〜4倍になると見られていて、まさに“AIがDCを引っ張る時代”になっています。GPUを何千枚も積むと1ラックあたりの電力がすぐ数十kWになり、旧来型DCでは載り切らないので、新しく“AI対応DC”を建てるしかない、という状況です。

動画・配信・ゲーム・リモートワークなどトラフィックがとにかく重くなったから

10年前はWebやメール中心だったトラフィックが、今は4K動画・ライブ配信・クラウドゲームに寄っています。重いトラフィックをユーザーの近くでさばくため、各地域にDCを置く動きが続いています。

データ主権・法令対応で“その国に置く必要が出てきた”から

EUのGDPR、各国の個人情報保護、政府系システムの国内設置要件などで、「米国のどこかのリージョンにあればいい」ではなく「うちの国・うちの地域に置いてください」というニーズが高まり、ローカルDC建設が増えています。これはアジア・中東でも強い動機です。�

経済産業省

電力と冷却を高効率にしたいから古いDCを建て替えている

2000年代前半のDCは今のAIワークロードに耐えられません。なので「古い1棟を止めて、より大きく・効率のいい1棟に置き換える」需要も統計上“増えている”側に見えます。�

電力中央研究所

これからも増えるのかの考察

短く言うと「数としても、総電力としても、まだ増える。けれど“どこでも建てられる”時代ではなくなる」です。

増える方向の力

生成AI・RAG・AIエージェント系で「1ユーザー=1つの重いモデルを動かす」場面が増えていくので、計算資源は確実に右肩上がり。

ハイパースケーラーが自社チップを増やすと、一時的に“対応できるDCの種類”が限られるので、新規DCを設計した方が早いケースが多い。

国際海底ケーブルとセットで“ハブDC”を置く国がまだ増える見込み(東南アジア・中東・北欧)。

頭打ち・制約になりそうなところ

電力が取れない:IEAでも2030年にDCの電力が現在の2倍超になると見ており、米欧では「送電線が先に詰まる」議論が出ています。電力を確保できる場所に建てる、再エネ直結にする、小型原子炉・熱蓄電と組み合わせる――など“電力前提でのDC設計”になります。

冷却が難しい:高密度ラックの増加で水冷・液浸冷却の導入が進み、これに対応できるDCしかAI案件を取れない、という分化が起きます。

建設コスト上昇:資材・人件費の高騰で、なんでもかんでも建てるわけにいかない、というのは各国同じです。

なので「世界全体としては増えるが、電力・冷却・ネットワークの3点が確保できる地域に偏って増える」というのが2025年時点で一番実務的な見方です。

日本でも増えるのか?

結論は「増える。ただし場所と規模が偏る。東京だけにはもう入りきらないので、周辺や北海道・九州に伸ばす形になる」です。

日本については、経産省・総務省が2024〜25年にかけて“国際的なデータ流通のハブ機能を国内に持ってきたい”という方針を出していて、データセンター・陸揚げ局・IXを支援する基金も積んでいます。つまり政府も「日本国内でもっとDCを増やしたい」と公式に言っています。

増える理由を日本向けに並べるとこうです:

東京・大阪の既存DCの電力が逼迫しているので、新設の余地がある

既存ビルではAI向け高密度ラックが入らないため、千葉・茨城・埼玉・栃木などに“東京近接DC”を建てる動きが増えます。

海外ハイパースケーラーが“日本リージョンをもっと太くしたい”

日本はトラフィックは多いのに、土地・電力が限られていて、まだ米国ほどのスケールにできていません。外資勢が自前で建てる・国内事業者のハイパースケールDCを借りる、という両方がしばらく続きます。

寒冷地×再エネのロケーションが評価されている

北海道・東北・長野あたりは冷却がしやすく、再エネとも組みやすいので、AI/DC向けに“日本版ハブ”をつくろうという構想が複数あります。電力需要の将来推計でも、DC向け需要は一般需要と違う伸び方をする、と指摘されています。

国際海底ケーブルの日本寄港を増やす計画がある

ケーブルの陸揚げ局とDCはセットで整備されるため、ケーブルが増えればDCもついてきます。

一方で、日本ならではの注意点もはっきりしています。

首都圏の変電所からこれ以上どれくらい引けるのか

電力インフラが先に詰まるとDCも建てられません。ここはまさにユーザーが普段やっておられる特高受変電やデジタル変電の領域と直結します。AI対応の新DCは最初から特高・2回線・自家発・蓄電・系統連携を一式で設計するので、電気設備側がボトルネックにならないようにすることが超重要です。

建設コストが高く、PUEを詰めないと採算に乗りにくい

2024年以降、建設コストの上昇が総務省資料でも課題とされていて、立てる場所・規模・冷却方式をかなりシビアに選ぶ必要があります。

まとめ(要点だけ)

IDCは「インターネットにつなぐサーバを安全・高速・止めずに動かすための専用施設」。クラウドの土台。

世界では、クラウド+AI+動画+データ主権の4本でまだ拡大中。特にAIが“DCを増やす新しい波”になっています。

これからも増えるが、電力・冷却・ネットワークが取れる地域に偏る。

日本も増やす方向で政府・事業者ともに動いているが、首都圏の電力とコストがネックなので、周辺・寒冷地・再エネ地区への分散が現実的シナリオです。

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