ガス絶縁開閉器に用いられる
T型ケーブルヘッドとI型ケーブルヘッドの違いと注意点
ガス絶縁開閉器(GIS/C-GIS)において、
ケーブルヘッドの形式選定は「末端の話」ではありません。
T型かI型かの選択は、
- 施工品質
- 長期信頼性
- 将来の更新性
トラブル発生時のリスク
に直結する、極めて設計色の強い判断項目です。
本記事では、
T型ケーブルヘッドとI型ケーブルヘッドの構造的な違いと、
現場で実際に問題になりやすい注意点を、技術者目線で整理します。
T型ケーブルヘッドとは
構造と特徴
T型ケーブルヘッドは、
GISのブッシングから**直角方向(T字)**にケーブルを引き出す構造です。
- ケーブルは横方向に引き出される
- 応力円錐やエルボを介して接続される
- 比較的スペースに余裕のある配置が前提
となります。
主な採用シーン
- 地上設置の変電所
- ケーブルピット・ケーブルトレンチを確保できる設備
- 更新や将来増設を想定した設備
T型のメリット
- ケーブル曲げ半径を大きく確保しやすい
- 施工状態を目視確認しやすい
- 更新・撤去時の作業性が良い
人が扱う設備として、非常に素直な構造と言えます。
I型ケーブルヘッドとは
構造と特徴
I型ケーブルヘッドは、
GISのブッシング軸方向に**一直線(I字)**でケーブルを接続する形式です。
- ケーブルは真下(または真上)方向に引き出される
- 非常にコンパクトな構造
- 高密度配置が可能
という特徴を持ちます。
主な採用シーン
- 地下変電所
- 都市部の建屋制限が厳しい設備
- データセンター系統などの高密度設備
I型のメリット
- 設置スペースを最小限にできる
- GIS盤の前後寸法を抑えられる
- 建築条件に強く左右されない
設備都合を優先した形式と言えます。
T型ケーブルヘッドの注意点
① 曲げ半径の「油断」
T型は一見すると余裕がありそうに見えますが、
ケーブル終端直下で急曲げになっている
実際の施工状態を見ると許容最小曲げ半径ギリギリ
というケースは珍しくありません。
👉 設計段階で「完成状態の断面」を必ず確認することが重要です。
② ケーブル自重の処理
横引き出し構造のため、
ケーブル重量が端子部に集中しやすい
サポート不足だと長期的な応力が残る
結果として、
応力集中 → 絶縁劣化 → 部分放電
につながるリスクがあります。
③ 防湿・結露対策
T型はケーブルピットやトレンチと近接するため、
- 湿気
- 温度差
の影響を受けやすくなります。
端子箱内の結露対策を怠ると、
数年後に絶縁性能低下として顕在化します。
I型ケーブルヘッドの注意点(よりシビア)
① 施工精度への依存度が非常に高い
I型は構造上、
- 心線の同軸度
- 応力円錐の位置
- シールド処理
これらのわずかなズレが、
そのまま電界集中につながります。
👉 耐圧試験に合格しても安心できない形式です。
② ケーブル引き込み作業の難しさ
真下方向に引き込むため、
- ケーブルのねじれ
- 心線の微妙な偏心
が起こりやすく、
施工者の技量差がそのまま品質差になります。
③ 更新・交換時のリスク
I型は一度施工すると、
- 再施工が非常に困難
- 地下設備では作業姿勢・換気・ガス管理が厳しい
という問題があります。
👉 省スペースの代償として、将来工事の難易度が跳ね上がる点は要注意です。
T型・I型 共通の重要注意点
● 責任分界の不明確さ
ケーブルヘッド周りは、
GISメーカー
ケーブルメーカー
施工業者
の責任分界が曖昧になりがちです。
👉 型式組合せの実績確認と、
👉 責任範囲の明文化は必須です。
● 試験結果への過信
- 耐圧試験
- 部分放電試験
は「初期状態」の確認にすぎません。
- ケーブル固定状態
- 熱伸縮
- 長期応力
は運転開始後に効いてくる要素です。
まとめ:T型かI型かは思想の違い
観点:T型:I型
施工性:T型→良:I型→悪
保守性:T型→高:I型→低
スペース:T型→必要:I型→最小
人への依存:T型→低〜中:I型→高
更新工事:T型→容易:I型→困難
I型は「設備都合優先」
T型は「人と将来を考えた形式」
という認識を持つことで、
後工程や運用フェーズでの後悔を減らすことができます。
技術者向けひとこと
ケーブルヘッドは「つながっていれば良い部品」ではありません。
最も電界が厳しく、最も人の腕が出る場所です。
だからこそ、
形式選定の段階で悩む価値があります。



コメント