メカリレーの「動作時間」と「復帰時間」は、制御回路やインターロック設計でめちゃくちゃ大事なポイントなので、ここで一度きっちり押さえておきましょう。
1. 動作時間とは?
定義(ざっくり)
コイルに定格以上の電圧(または電流)を加えてから、
接点が「動作状態」になって安定するまでの時間。
つまり:
N.O.接点:開→閉になるまで
N.C.接点:閉→開になるまで
ここで注意したいのは、「磁石が動き始めた瞬間」でも「カチッと音がした瞬間」でもなく、
仕様書で規定された接点状態になり、実用上使える状態で安定するまで
を動作時間と見なすこと。
典型的な時間のイメージ
※あくまで一般的なメカリレーのイメージです。必ず実機のデータシートを優先。
小形信号リレー:おおよそ 5〜15 ms
一般産業用リレー(ミニパワーリレー等):10〜30 ms
大形電磁継電器(電力用):構造によっては 20〜50 ms 以上 もあり得る
2. 復帰時間とは?
定義
コイルへの印加を止めて(または規定以下まで電圧が下がって)、
接点が「元の状態」に戻り、安定するまでの時間。
N.O.接点:閉→開に戻るまで
N.C.接点:開→閉に戻るまで
復帰時間は、
動作時間より短いことが多い(バネで戻るだけなので)
ですが、実際には「コイルの磁束が消えるまでの遅れ」や「残留磁気」「吸引部の摩擦」などで変動します。
典型的な時間のイメージ
小形信号リレー:2〜10 ms 程度
一般リレー:5〜20 ms 程度
3. 動作電圧・復帰電圧との関係
メカリレーの時間は、「電圧が十分かどうか」にかなり影響されます。
動作電圧(Pick-up Voltage)
コイル電圧を上げていったときに、リレーが動作する最小電圧。
復帰電圧(Drop-out Voltage)
動作中のコイル電圧を下げていったときに、リレーが元に戻る最大電圧。
一般的に:
復帰電圧は動作電圧より低く、
「ヒステリシス(余裕)」があることでチャタリング防止になっています。
定格電圧ギリギリや、規定外の低電圧運転だと、
動作時間が長くなる
動作しない/チャタる
復帰が遅れる・しない
などの不具合につながるので要注意。
4. 実務での「注意点」多めにまとめます
ここが本題です。設計や現場でハマりがちなポイントを挙げていきます。
(1) カタログ値は「代表値」/「条件付き」
動作時間・復帰時間は、よく**「定格電圧印加・23℃・無負荷・規定姿勢」**など条件付きです。
実機では:
温度
電源電圧変動
姿勢(縦置き・横置き)
経年劣化
コイル温度上昇 で平気で変わります。
設計では「カタログ代表値+マージン」を見るのではなく、
「最大値/最小値+安全側マージン」で考える。
(2) 接点バウンス(チャタリング)を時間に含めないと危険
リレーが切り替わる瞬間:
接点が一度でピタッとくっつくわけではなく、
数百 µs〜数 ms 程度、**バウンド(ON/OFFを繰り返す)**します。
この揺れを無視して
「カタログに10 msって書いてるから、11 ms後に信号読めば大丈夫っしょ」
とやると、
PLCの高速入力
カウンタ回路
インターロック信号
で誤カウント/誤動作の原因になります。
💡対策イメージ:
論理側で「数 ms〜十数 ms のフィルタ/デバウンス時間」を取る。
シーケンスで「リレー動作後の待ち時間」をほんの少し長めに設定する。
(3) サージ吸収素子が「復帰時間」を伸ばす
コイルの逆起電力対策に、
フリーホイールダイオード
RCスナバ
バリスタ
ツェナーダイオード
などを入れますが、これが復帰時間に影響します。
特に:
フリーホイールダイオード単体:
コイル電流がゆっくり減衰 → 復帰が遅くなる(数 ms〜十数 ms 増えることも)
ツェナー併用・高速クランプ:復帰時間の伸びを抑えられる代わりにサージ電圧は高め
制御盤設計で、
「このリレーは速く離してほしい」
「インバータのトリップ、非常停止系、インターロック」
のような信号には、
サージ対策と動作時間のトレードオフを意識すること。
(4) LED内蔵・ドライバ回路内蔵リレーの落とし穴
・ソケット付きリレーなどで、
・動作表示LED内蔵
・トランジスタドライバ内蔵
・サージ吸収回路内蔵
のタイプは多いです。
これらは便利ですが:
**カタログに記載の動作/復帰時間は「内蔵回路込み」**の値を確認すること。
外付け回路まで重ねると、想定よりさらに遅くなる場合があります。
「LED付きだから一緒っしょ」と思って流用すると、
タイミング設計で 数 ms〜十数 msのズレが出て事故要因になります。
(5) 負荷側の影響を混同しない
リレーの動作時間はコイルと機械部分の話であって、
接点の先につながってる負荷(ソレノイド、コンタクタ、ランプ)が動く時間
モータが回り始める時間
とは別物です。
インターロックやシーケンスで、
「リレーがON=設備が安全状態になった」
と短絡的に扱うと危険です。
必要なら、フィードバック接点(補助接点)
実績信号(圧力スイッチ、位置スイッチ等)
で実際に設備が動作したことを確認してから次動作に進めるべきです。
(6) 最低パルス幅・断続制御に注意
高速制御やパルス駆動でリレーを使うときは:
動作時間より短いパルスでは物理的に動けません。
ギリギリのパルスだと、
接点が半端に動く
アークが出やすい
寿命が極端に縮む
→ 「メカリレーは機械部品」なので、1秒間に何十回も切り替える用途には基本不向き。
高速用途は半導体リレーやトランジスタ出力に任せるのが無難です。
(7) 姿勢・振動・汚れ・経年劣化
机上で測ったときは早くても:
現場の振動
ほこり・油分
サビ・摩耗
バネの劣化
残留磁気の蓄積
などで、
動作が遅れる、復帰が遅れる
時々戻らない(固着気味)
といったことが普通に起こります。
重要回路では:
メンテ周期を決める
視認・試験で時々確認する
一定年数で予防交換する
ことも含めて「時間特性が変動する前提」で考えてください。
(8) ACコイル特有の注意
ACリレーは、
周波数
波形歪み
電圧低下
に敏感です。
特に:
電圧低下中だと吸引力が不安定になりチャタリングしやすい
チャタリング中は接点にとって一番の地獄(アーク多発・焼損)
なので、ACコイルを使う場合は、
電源品質
他機器起動時の電圧ディップ
も考慮して設計する必要があります。
5. 現場・設計者目線でのまとめ
「動作時間/復帰時間」は“理想値”ではなく“設計条件”
代表値だけ見て決め打ちしない。
チャタリング・サージ対策回路・LED内蔵の影響を必ず含めて考える。
負荷の実動作時間とリレー自身の時間を分けて考える。
高速動作が必要なところにメカリレーを使わない。
(使うならかなり太めのマージンを取る)
経年・温度・姿勢・振動で特性は変動する前提で、
インターロックや安全回路は余裕を大きめに設計する。


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