1. 標準仕様のモールド変圧器が屋外を前提としない理由
モールド変圧器は、巻線をエポキシ樹脂で固めた乾式変圧器であり、以下の要因から屋外常設環境に対して脆弱です。
◎(1) 紫外線(UV)劣化
- エポキシ樹脂は紫外線に弱く、長期間の屋外暴露により
- ひび割れ
- 変色
- 表面電気特性の低下
が発生する可能性があります。
◎(2) 雨水・湿気の浸入
乾式変圧器は油入り変圧器のような油タンクによる密閉構造ではないため、絶縁部(モールド)やコイル端部への水分付着は絶縁性能の低下につながるため、裸設置は不可です。
◎(3) 塩害・粉塵・化学ガスへの弱さ
モールド樹脂は耐環境性を強化できますが、標準品は
- 塩害
- 化学ガス
- 工場の粉塵
- 排気ガス
といった屋外環境に十分強くありません。
2. しかし「屋外用モールド変圧器」は実在する
国内主要メーカー(東芝、愛知電機、ダイヘン、タカオカ化成など)は、以下のような仕様を追加した屋外対応型乾式/モールド変圧器を提供しています。
◎屋外対応仕様の例(メーカー共通)
- 金属製屋外ケース(IP44・IP54相当)
- 防水・防塵構造(NEMA準拠ケース)
- 塩害地向け防錆塗装
- 耐UV仕様の特殊エポキシ樹脂
- 吸湿防止の表面コーティング
- 強制風冷装置の屋外対応化
つまり、モールド変圧器そのものを屋外に直接置くのではなく、保護筐体に収めて屋外用として運用するのが一般的です。
3. 屋外でモールド式変圧器を使うときの典型構成
◎(1) 屋外収納箱(屋外キュービクル)に収容
高圧受電設備では実務上もっとも多く、この方式は国内高圧受電キュービクル内での乾式/モールド変圧器使用で広く採用されています。
◎(2) 屋外架台に設けた「専用屋外ケース」入り
道路・鉄道設備・工場外構置き場などで用いられる方式。
メーカーの屋外専用ケース(IP44〜IP54)を採用します。
4. 屋外使用がモールド変圧器で推奨されるケース
- 油漏えいリスクを完全に避けたい施設
- 地下ピットや建屋スペースが不足している場合
- 防災要件で油入変圧器を避けたい場所
- 離島・病院・交通インフラなどで保守性・耐災害性を高くしたい場合
ただし、屋外ケースを含めると油入よりコストが上がる場合も多いため、設計時には要比較です。
5. 屋外使用時の技術的留意点
- コイル温度上昇を考慮し、風冷・自然空冷の性能低下を見込む
- 屋外ケース内の内部温度管理(換気・強制空冷)が必要
- ケース内部の結露対策(ヒータ設置)
- 塩害環境では追加の防錆・防塩処理
- ケースの短絡耐力・地震対応
稼働時騒音の拡散を計算(遮音板が必要な場合あり)
結論
モールド式変圧器は「素の状態では屋外使用不可」だが、「屋外仕様の保護筐体を付けることで屋外使用は可能」である。実務では、屋外キュービクル収容または屋外専用ケースに入れた形で多数採用されています。



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