配電線がループ構成(いわゆる「環状配電線」)になっている場合、インピーダンスの非対称性によって循環電流(ループ電流)が生じ、この電流が地絡方向継電器(67G/67N)に誤動作を引き起こすことがあります。以下では、その原理を式を交えて詳しく説明します。
ループ構成配電系の概要
ループ構成とは、配電線を両端から給電する構成で、例えば以下のような形です:
A母線 ─── L1 ─── 負荷 ─── L2 ─── B母線
通常はA母線とB母線が同一電圧(例:6.6kV)で同期しているため、負荷側は二重給電状態になります。しかし、L1とL2のインピーダンス(抵抗RおよびリアクタンスX)が完全に等しいとは限らないため、負荷電流とは別に循環電流が流れます。
循環電流発生の原理と式
A母線とB母線の位相差をΔV(電圧差)とし、それぞれの線路インピーダンスをZ₁、Z₂とすると、循環電流Icは次式で表されます:
Ic = (V_A – V_B) / (Z₁ + Z₂)
ここで、V_A, V_Bは各母線の電圧(複素数)、Z₁ = R₁ + jX₁、Z₂ = R₂ + jX₂は線路の複素インピーダンスを示します。母線電圧差ΔVがごくわずか(例えば1°以内の位相差)でも、Z₁とZ₂が非対称であればIcは無視できない大きさになります。
地絡時の電流成分と地絡方向継電器の誤動作メカニズム
地絡方向継電器(67G, 67N)は、零相電圧Voと零相電流Ioの位相関係で地絡方向を判定します。通常、地絡時はVo∠0°、Io∠θとして、VoとIoの位相関係(cosθなど)から故障点方向を検出します。
しかし、ループ構成下で循環電流Icが流れているとき、地絡が発生していなくてもIoに微小な成分が含まれ、これが誤って地絡電流とみなされることがあります。
継電器の動作条件は通常:
|I₀| > I_set かつ ∠(V₀, I₀) ≈ 地絡方向角
ここで、I₀ = (I_R + I_S + I_T)/3 と表されます。
循環電流成分 I_c が三相不平衡や線路インピーダンス差によってIoに混入した場合、I₀ = I₀(地絡) + I₀(循環) となり、もし |I₀(循環)| cos(∠(V₀, I₀(循環))) > I_set を満たせば、実際に地絡がなくても動作することになります。
具体的な数値例
例えば6.6kV配電線で、A側・B側の母線間電圧差が1°(約115V相当)あり、線路の合成インピーダンスが1+j1Ω(約1.4Ω)であれば:
I_c = 115 / 1.4 ≈ 82 A
となります。もしこの82Aの循環電流が各線の不平衡成分として零相電流Ioに約1〜2%混入すれば、I₀ ≈ 1.6 A となり、67N継電器の感度整定(例:1A動作)を上回る可能性があります。結果として、地絡方向継電器が誤動作する危険性があります。
対策
① 線路インピーダンスの均等化
ループ線の長さ・断面積を揃えることで循環電流を最小化します。
② 母線電圧位相の同期化
母線間の電圧位相差ΔVを極小化します(同期チェックリレー使用など)。
③ 67N整定の見直し
循環電流を考慮して整定電流・位相範囲を適正化します。
④ ループ開放運転
誤動作が問題となる場合、一時的にループを開放(放射状構成)にすることも有効です。
まとめ
| 要素 | 内容 |
| 原因 | ループ構成によるインピーダンス差・母線電圧差 |
| 現象 | 循環電流が流れ、Io成分に混入 |
| 結果 | 地絡方向継電器(67G/67N)が誤動作する可能性 |
| 対策 | インピーダンス均等化、同期化、整定見直し、放射運転 |
このように、ループ構成配電線ではインピーダンスや母線間の微小な電圧差によって循環電流が生じ、継電器誤動作を誘発することがあります。設備設計や整定検討においては、この現象を考慮することが重要です。



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