― 地絡検出と鉄共振リスクを左右する“設計の肝” ―
受変電設備で用いられる三巻線EVT(計器用電圧変成器)。
一次は系統電圧、二次は110Vなどの計測・保護用、そして三次巻線は主に零相電圧(3V0)検出のために使われます。
この三次巻線の「電圧値の大小」は、単なる仕様差ではありません。
地絡検出感度・リレー整定・鉄共振(FER)リスク・制振抵抗設計まで波及する、実務上きわめて重要なパラメータです。
本稿では、ブログ原稿向けに整理します。
三次巻線の役割とは何か
三巻線EVTの三次巻線は、主に次の用途で使われます。
- オープンデルタ結線による零相電圧検出(3V0)
- 地絡方向継電器(64G, 67G)の入力
- 系統地絡監視
特に非接地系・高抵抗接地系では必須構成です。
三次巻線電圧が高い場合/低い場合で何が変わるか
① 地絡検出感度が変わる
三次巻線の定格電圧が高いほど、地絡時の出力電圧が大きくなる。リレー入力が大きくなる。S/N比が向上する。
つまり、微小地絡の検出感度は上がる傾向にあります。
一方、三次巻線電圧が低い場合は、微小地絡では出力が小さい。ノイズ影響を受けやすい。という弱点があります。
② リレー整定値が変わる
例:
三次 110/3 V
三次 190/3 V
では、同じ地絡でもリレー入力値が異なります。したがって
59G整定値
64G動作値
方向地絡の偏角設定
が変わります。電圧が高い三次巻線ほど、整定値は高めに設定される傾向になります。
③ 鉄共振(FER)リスクが変わる
三次巻線電圧が高いと、
- 磁束レベルが高くなる
- 飽和点に近づきやすい
- 鉄共振条件が成立しやすい
特に、
- 長距離CVケーブル
- 真空遮断器
- 軽負荷状態
が重なると、FERが発生しやすくなります。
このため三次巻線電圧が高い場合は、制振抵抗(ダンピング抵抗)必須であり、抵抗容量も大きくなる傾向があります。
④ 制振抵抗設計が変わる
三次巻線電圧が高いほど、
- 制振抵抗の耐電圧が高くなる
- 発熱容量も大きくなる
- コスト増加
します。
実務では、「電圧を上げれば検出感度が上がる」という単純な話ではなく、FERとのトレードオフ設計になります。
⑤ 絶縁設計とコスト
三次巻線電圧が高い場合、
- 巻線絶縁厚増加
- EVTサイズ大型化
- コスト上昇
になります。特高22kV系では顕著です。
実務での考え方
設計思想としては次の順序になります。
① 系統接地方式を確認
非接地?
抵抗接地?(抵抗値は?)
② 必要な地絡検出感度を決定
微小地絡まで拾うのか
方向検出が必要か
③ ケーブル長・容量を確認
長距離CV?
FERリスクは?
④ 制振抵抗の可否を判断
高くすれば良いわけではない理由
三次巻線電圧を上げると:
✔ 地絡感度向上
✔ リレー入力安定
しかし同時に:
✖ FERリスク上昇
✖ 制振抵抗容量増大
✖ コスト増
になります。したがって、“適切な電圧”を選ぶのが設計です。
データセンター・大容量系統の場合
近年増えている:
- 長距離22kV CVケーブル
- 大容量変圧器
- I0r方式併用
の系統では、三次巻線は標準電圧仕様+制振抵抗付きが実務上ほぼ標準です。
電圧を安易に上げる設計は、FERを呼び込みます。
まとめ
三次巻線電圧の大小は:
項目:影響
地絡検出感度:変わる
リレー整定:変わる
FERリスク:変わる
制振抵抗設計:変わる
コスト:変わる
つまり、三次巻線電圧は「地絡検出と鉄共振のバランス設計」で決まるということです。


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