グレーゾーンの誘惑
日本では“ガンダム”といえばバンダイ。バンダイといえばガンダム
プラモデル界の王者、キングオブキングだ。
子どもの頃からガンプラを作って育ってきた身としては、「ガンダムに似ている中華製プラモ」とに手を出してみた。ちょっとした裏切り行為のようにも感じる。誰に言えばいいかわからないがごめんなさいと・・
とはいえ、冷静に考えれば「そっくりだけど別物」なら違法ではない。
著作権や商標に触れなければ、単なるオリジナルロボットという扱いになる。しかし、この“そっくり具合”が微妙なのだ。本当に心配になるほどに・・・・
頭の形も、胴体のプロポーションも、武器構成も、「ちょっとアレンジしただけのガンダム」にしか見えない。プラモデルファンとしてのモラルが揺らぐ。「買いたいけど、買えない」――そんな葛藤が続いた。
しかし、ある日、YouTubeでとあるレビュー動画を見た。「中華製オリジナルプラモ買ってみたけど、想像よりずっと良かった」という内容だ。動画の中で、組み立てたロボットが関節をぐりぐり動かし、メタリック塗装が光を反射している。正直、見た目はかなりカッコいい。しかも、値段は国産プラモの半分以下。気づけば、マウスをクリックしていた。大丈夫オリジナルなんだから。
届いた箱の中身
数週間後、ようやく届いたその箱は思ったより大きかった。当たり前だ。1/100なのだから。1/100のプラモデルを手に取れるなんて何年ぶりだろう。
外箱のデザインは、どことなく昔のガンプラを思わせるが、英語と簡体字の入り混じったパッケージは妙に異国情緒がある。
箱を開けるとランナーがぎっしり。プラスチックの質感は……正直、バンダイほどの精度ではない。少し柔らかく、ところどころバリが出ている。けれど、パーツの細かさや造形の密度は驚くほど高い。「え、これが3000円台?」と思わず声が出た。
日本製なら7000円、いや8000円はしてもおかしくないクオリティだ。色分けも多く、パーツごとに異なるトーンのグレーやホワイトが使われている。最近のガンプラに匹敵するレベルだ。
組んでみて感じた「意外な良さ」
パーツの合いは少し甘い。たまに押し込む力加減を間違えるとピンが折れそうになる。別にそんなことはどうでもいい。1/100サイズのプラモデルを組めている多幸感は何物にも変え難かった。
実際、肩のジョイントを一つ破損してしまった。だが、それ以外は意外とスムーズ。
関節の可動範囲が広く、脚の可動ギミックには「これ、本当に中国製か?昔は単色成形の食玩以下だったぞ?」と驚かされた。
腰や腕の関節にはポリキャップではなく硬質プラを使っていて、関節保持力が非常に強い。最近のMGシリーズにも通じるメカニカルな構造が感じられた。それと同時にMGの山積みが見れない虚しさがよぎった。
脆いけど、許容範囲 強度には期待していない
ただし、弱点もある。とにかく脆い。
パーツのプラスチックが少し硬質すぎて、力を入れるとパキっといく。特に関節やアンテナ部分は要注意。可動を何度か繰り返すと、緩んだり、白化したりする箇所もある。とはいえ、価格を考えれば文句は言えない。2000〜3000円でこのクオリティなら、むしろ“すごい”としか言いようがない。そして同時に誰に言えばいいかわからないが「ありがとう」と言いたくなった。
中華メーカーの“進化の速さ”
さらに驚かされたのは、ラインナップの多さだ。アリエクスプレスを覗くと、そのデザイン群がまるで新世代のガンダム群を予感させる内容だった。
翼のあるモビルスーツ、重装甲の機体、女性型メカ。どれもデザインセンスが高く、単なるコピー文化を超えつつある。
中国メーカーは、コピーから始まってオリジナルへ移行するスピードが異様に早い。ドローン、スマホ、EV、自転車、そしてプラモデル。かつて「模倣」と呼ばれたものが、いまや「独自の市場」として成長している。「模倣」を繰り返してもはや「オリジナル」の一歩手前まで来ている。
もはや「バンダイ」は「アナハイム」なのではないか?とさえ思ってしまった。
新しい工場で作るべきはオリジナルガンダムとオリジナルジムだったのでは?と思ってしまった。
バンダイの牙城は、揺らぐのか? 現実のアナハイムとなるのか?
棚に並んだ二体のロボット――一方は正統派のガンダム、一方は中華製オリジナル。
二つを見比べて、ふと思った。「このままでは、バンダイのプラモデル事業が危ないのではないか?」ガンプラは日本が誇る文化だ。
精密な成形技術、巧みなパーツ分割、そして“作る楽しさ”を提供してくれる完成度。しかし、それを支えてきたのは“圧倒的な独自性”だった。
それがもし、海外メーカーによって“再現”され、“安価に量産”されるようになれば――競争環境は一変する。
そして一つ思い出したことがある。ガンプラをなぜおっさんになって作り続けるか?だ。
それは自分の手の中で物語が刻まれていき、アニメのストーリーを追体験と補完が出来たのだ。
あの感覚こそ「ガンプラ」に求めていたものだったのだ。
ジークアクスを見た時のどこかで感じた寂しさはこれだった。それは
「また焼き直しか」
というものだった。だが中華製プラモデルはどうだ。作っている間いい年したおっさんがわくわくしながら作れたのだ。
このモビルスーツはどんな物語を紡ぐんだろうか?と
ファーストガンダムとエヴァンゲリオンの二番煎じの折衷案で出来たジークアクスのプラモデルには感じなかった感情だ。
一抹の不安と期待
中華製プラモデルを買ってみて思った。安くて、意外といい。脆いけど、許容範囲。でも、だからこそ少し怖い。そしてプラモデルの良い部分、魅力だった部分はもしかしたら中華製プラモデルが持っていってしまったかもしれない。
この勢いのままでは、もしかすると、バンダイのプラモデル事業が静かに追い詰められていくかもしれない。
そんな一抹の不安を胸に、今日も新しいロボットを棚に並べた。光沢のあるその装甲は確かに安っぽい。
けれど、どこか誇らしげにも見えた。そしてこう語っているようにも見えた。
「作ってくれてありがとう。これから一緒に色んな物語を作ろう。」と
そんな中二病を再発した夜だった。


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