「ガンダムそっくり」と「オリジナルデザイン」とバンダイの新工場で作られた「アレ」を見せられた中年が考える。
「ガンダムそっくり」と「明らかなコピー」の中華プラモの現状
アマゾンなどの通販サイトを覗けば、誰もが一度は目にするだろう。頭部アンテナがV字で、胸の形状は青く、腰に赤、脚に白を基調としたシルエット。商品名はここでは書かない。
書く必要がないほどアマゾンでは普通に検索すればヒットするし、買えてしまうからだ。
買わないと決めているからはっきり書く。
百式改?
アカツキ?
サイサリス?
キュベレイ?
その完成写真を見ると、「これはどう見てもガンダムでは……?」と誰もが思う。
これらの多くは**“非公式コピー”**と呼ばれる領域にある。つまり、バンダイが権利を持つ『機動戦士ガンダム』シリーズのデザインを参考にしつつ、正式ライセンスを得ていない製品だ。
しかし同時に、全てが単純な模倣品とは言い切れない。造形の精度が高く、部分的にオリジナルのアレンジを加えている場合もあるため、購入者の中には「ガンプラを超えた」と評価する声すらある。
“買う”という行為に潜む法的リスク
まず最初に押さえておくべきは、個人が購入すること自体の違法性は基本的にないという点である。著作権法・商標法などの多くは、侵害品の製造・販売・輸入を禁じるものであり、個人が私的に購入・所持することまでは対象外だ。
したがって、消費者として中国の通販サイトから一個買ったからといって、即座に罪に問われることはない。
しかし、これはあくまで“グレーゾーンの上に立つ安全”に過ぎない。
次のようなリスクは現実的に存在する。
① 通関・輸入時のトラブル
海賊版・模倣品と判断された場合、税関で没収・廃棄されることがある。
これは購入者に罪がなくても発生し、返金も困難なケースが多い。
特に「Gundoom」「Gundam Model」など、明らかに商標類似の名前で出品されている場合、通関で止められるリスクが高い。
② クレジット・個人情報のリスク
中華系通販サイトの中には、決済システムが不透明な業者も存在する。
偽サイトやフィッシング被害に遭うリスクは、ガンプラの出来よりも深刻だ。
また、模倣品を扱う業者ほど、セキュリティ意識が低い傾向もあり、クレカ情報流出・スパムメールなどのトラブルに巻き込まれることもある。
③ SNS投稿でのトラブル
購入した“ガンダムそっくり中華プラモ”をSNSで堂々と投稿すると、ファンや法務関係者から指摘を受ける可能性もある。
「それ海賊版じゃないの?」というコメント一つで炎上し、意図せず“模倣品拡散の片棒を担ぐ”形になりかねない。
④ ブランドと趣味の信頼の問題
プラモデル界隈は、思いのほか狭い。
模型展示会やイベントで「それどこのメーカー?」と聞かれて、堂々と答えられないことは、趣味の信用を損なうリスクでもある。
「安かったから」「出来が良かったから」という理由だけで模倣品を選ぶと、周囲からの印象が変わってしまうのだ。
“オリジナル中華プラモ”という新しい潮流
一方で、すべての中華プラモが「ガンダムの模倣」ではない。
ここ数年で急速に成長した中国オリジナルメカブランドがいくつも存在する。
たとえば「JOYTOY」「INASK」「SNAP DESIGN」「MOTORIZED UNIT」などは、完全オリジナルのメカデザインを展開し、ハードディテール・関節構造・ギミック面で日本メーカーに迫る完成度を誇る。そしてこれだけは言いたい。
中華製オリジナルプラモデルが好きだ。
オリジナル中華プラモには、3つの大きなメリットがある。
メリット①:デザインの自由度と新鮮さ
中国メーカーのオリジナルデザインは、日本的な“文法”にとらわれていない。
ガンダム的な「胸・腰・頭のバランス」に縛られず、SFとファンタジーの中間のような造形を生み出している。
巨大ロボというより、“戦闘機と人型兵器の融合体”“ドローン的四脚メカ”など、世界観が自由だ。
そのため、「見たことのない新しいロボ」を探している人には、非常に魅力的な選択肢になる。
メリット②:価格とコストパフォーマンス
一般的に中華オリジナルプラモは、ガンプラの半額〜2/3程度の価格でありながら、多色成形やポリキャップレス可動など、技術的にも侮れない。
近年では3D CAD・金型加工技術が急速に進化し、日本メーカーとの差は縮まっている。
「安い=粗悪」という構図は、もはや過去の話になりつつある。部品精度も年々向上し、パチ組みで十分映える仕上がりの製品も多い。
メリット③:新しい文化・発想との出会い
オリジナル中華プラモの多くは、中国国内の若いデザイナーがSNSを通じて立ち上げたブランドだ。日本のアニメやゲーム文化に影響を受けつつも、「中国ならではの重厚感」や「漢字・龍・武術」モチーフを組み合わせており、どこか“異国のロボ美学”を感じさせる。
このような製品を買うことは、単にプラモデルを楽しむだけでなく、アジア圏の新しいクリエイティブ潮流を応援する行為にもなりうる。
つまり「文化的な投資」なのだ。
品質面の実際:壊れやすいが“悪くない”
筆者も実際に中華オリジナルプラモをいくつか購入してみた。結論から言えば「脆いけれど、悪くない」という印象だ。関節の保持力やABS素材の強度は、依然としてバンダイ製に及ばない。
ピンが細く、組み立て時に折れることもある。だが、可動範囲やディテールの密度、さらにはパーツの分割構成には情熱とアイデアを感じる。
むしろ「不完全さを許容して楽しめる人」なら、これほど面白いジャンルはない。模型趣味とは、もともと「手を動かして完成に近づける」文化だ。
完璧ではない中華プラモをどう調整し、どう塗り、どう飾るかその「挑戦の余地」こそが、楽しみを深めてくれる。
リスクを回避しつつ楽しむコツ
中華プラモを楽しむうえで、次の3点を意識しておくと安全だ。“ガンダムに似ているかどうか”を意識して線を引く似ている製品を避け、完全オリジナルを選ぶ。
特に「Gundoom」「Mobile Suit」など、商標がグレーなものは避けたほうが無難。たまにゼータとかグレイゼータとか怪しすぎるのがある。DABANなんて記載はかなり怪しい。
通販サイトの安全性を確認するAliExpressなど、実績のある大手プラットフォームを利用する。無名サイトやSNS直販は避ける。購入後の発信には注意する
SNS投稿時は「オリジナル中華プラモ」と明記し、版権作品と誤認されないようにする。他人の創作権を尊重しつつ、自分の趣味を堂々と楽しむ姿勢が大切だ。
“模倣”と“創造”の境界線
ここで少し哲学的な話をしたい。模倣とは、本来「学びの第一歩」だ。だが、それが他人の作品の市場価値を奪うレベルに達したとき、模倣は「侵害」に変わる。

模倣と侵害の切掛けは難しい。
模倣=侵害なら人形プラモデルなんて作れなくなる。
v字アンテナも使えない。
中華メーカーの中には、まさにこの境界線を曖昧にしてしまっているものもある。しかし、同じ中国の中にも、真摯に自分の世界観を築こうとするメーカーが確実に存在する。彼らの作品には、“ガンダム的遺伝子”を感じながらも、独自の未来を描こうとする意志がある。
我々がそうした製品を選ぶことは、模倣文化を助長するのではなく、むしろ健全な創作を支えることになる。
そして、日本メーカーへの静かな危機感
率直に言えば、バンダイのプラモデル事業は圧倒的に強い。しかし、その“強さ”にあぐらをかいてはいけないと感じる。というより最近はあぐらをかいているし、なんならアナハイム化している気さえする。
中華オリジナル勢は、今やスピードと柔軟性で上回り始めている。3Dモデリングから試作までの期間が短く、SNS発表→販売までが驚くほど速い。ユーザーとの距離感も近く、コメント一つで仕様が修正されることもある。
海賊版ガンプラを買っていないが、ラインナップがガノタの心と需要を理解している。
日本メーカーが“聖域化”している間に、世界のメカデザインの重心は東アジア全体へ拡散しているのだ。中華オリジナルプラモを買うことは、単に安さを取る選択ではない。
それは、私たち消費者が「創造の勢力図の変化」を実感する瞬間でもある。
安くて、意外といい。だが、その先にあるもの
最初は「安いから試しに買ってみた」。届いた箱を開け、少し脆い関節に苦笑しながらも、組み上がった姿に驚いた。「これでこの値段か」と。
その瞬間、少しだけ不安がよぎった。このままでは、バンダイのプラモデル事業が危ないのではないか。ガンプラが築いてきた“日本発のモノづくりの象徴”は、今や中国の若いクリエイターたちの熱量に追い上げられている。
中華プラモを買うことは、リスクもある。だがそれ以上に、時代の変化を肌で感じる行為でもある。模倣を超え、創造へと進もうとする中華オリジナルたち。
もう中華製プラモデルがサナリイになるときは後数年ほどなのかもしれない



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