公共工事の完成図書は、発注者(国・自治体など)に対して「契約どおりに工事が完成したこと」を証明するための正式な提出書類です。以下では、一般的に提出を求められる添付書類の一覧と内容を、カテゴリーごとに整理して説明します。
公共工事の完成図書に「何を」「どこまで」入れるべきか
公共工事の完成図書に「何を」「どこまで」入れるべきかは、
契約書・仕様書(設計図書)
公共工事標準請負契約約款
各発注者の「完成図書作成要領」「電子納品要領」
で細かく決まります。必ずそれが最優先ですが、そのうえでどの現場でも通用する実務レベルで丁寧に整理します。
1. 基本的な考え方(ここが腹落ちしてると迷わない)
完成図書は一言で言うと、
「第三者が見ても、この工事が契約どおり・仕様どおりに安全に作られ、今後も維持管理できると判断できる資料の束」
です。
なので中身は、
契約に適合している証拠
品質が確認されている証拠
どのように出来上がったかの記録
引渡し後に維持管理・更新できるための情報
で構成されます。
国交省系の電子納品要領でも、「完成図書=実施仕様書、計算書、施工図、機器図、施工管理記録書、取扱説明書等を工事完成時に提出するもの」と整理されています。�
国土交通省
2. 完成図書の標準構成(上位カテゴリ)
(1) 工事概要・契約関係
目的: 工事の「素性」を示す部分。
最低限は以下を揃えること
表紙・背表紙・総目次
工事概要
工事件名、工事場所、発注者、受注者、工期、工事種別、契約金額(必要に応じ)、工事目的の要約
契約関係は以下を揃える
契約書(写)
設計図書(一覧)
特記仕様書(写)
質疑応答書・協議書一覧(写:完成内容に直結するもの)
施工体制台帳(最終版)
受注者、JV、下請、現場代理人、監理技術者・主任技術者、各工種責任者
実施工工程表(完成版)
当初+最終工程(変更履歴が分かると親切)
ポイント:
実際の体制・工程と合うものを「最終版」として綴ること。
指名停止や監査対応を想定し、「誰がどういう体制でやったか」が追える状態に。
(2) 図面類(発注図/施工図/完成図)
目的: 「今そこにあるもの」を正しく図面化すること。
主な内訳:
図面一覧表
完成図(As-built図)
発注図+変更指示+実測結果を反映
平面図、縦横断図、構造図、配管・配線・設備配置図、機器配置図 等
系統図・結線図
電気:単線結線図、保護協調系統図、接地系統図、盤結線図、端子台一覧 等
機械設備:系統フロー、P&ID など
詳細図
特殊構造部、アンカーボルト、埋設管詳細、貫通部、防水処理部 等
必要に応じて施工図一式(参照用)
ポイント:
「赤書き」は施工中にマメに実施し、完成図は清書したものを提出。
型式変更・ルート変更・寸法変更は必ず反映(ここが抜けると後日トラブルの温床)。
国交省等の電子納品要領では「完成図」用フォルダが独立して規定されているので、その構成にならって整理すると無難。�
国土交通省
(3) 品質管理・出来形管理関係
目的: 「設計どおりの寸法・性能・仕様で作った」証拠。
代表的なもの:
出来形管理総括表
出来形管理写真付き一覧(必要に応じ)
主要部の出来形管理表
掘削・盛土厚、路盤厚、コンクリートかぶり厚、配管埋設深さ、ケーブルルートなど
品質管理計画書(提出済み最終版)
品質管理実施記録
コンクリート(スランプ、空気量、圧縮強度)
アスファルト、鋼材試験、溶接部探傷、塗装膜厚 など
使用材料一覧
品名、メーカー、型式、数量、適用箇所 ※代替品・設計変更部は特記
ポイント:
「どのロットを、どこに使ったか」が追えるレベルが理想。
監査でよく見られるのは「出来形管理表の空欄」「試験の抜け」「判定欄未記載」。
(4) 材料証明・試験成績書
目的: 材料・機器が仕様を満たすことの裏付け。
添付すべき主なもの:
各種材料証明書(ミルシート、出荷証明)
機器検査成績書(メーカー工場試験成績含む)
コンクリート・モルタル試験成績書
ワイヤロープ、アンカー、ボルト、高力ボルト
電線・ケーブルの試験成績(絶縁抵抗・耐電圧など)
塗装材料・防水材の性能証明
その他特記仕様書で要求される性能証明書一式
ポイント:
発注者要求の「原本/写し・有印/コピー可」の扱いに従う。
成績書の対象が「実際に施工したロット」と対応しているか確認。
(5) 写真管理(デジタル写真含む)
目的: 施工過程・重要部が正しく実施されたことの視覚的証拠。
必要なもの:
写真管理総括表
施工写真(着工前 → 施工中 → 完成)
主要出来形部分
かぶり厚、配筋、埋設管、ケーブルジョイント、基礎形状 等
番号・工種・撮影位置・方向・撮影日・説明付き
電子納品の場合:JPG+付帯情報(XML等)を要領に従い作成
ポイント:
「ここを壊さないと確認できない部分」を確実に撮る。
不鮮明・重複・説明不足が多いと、検査で突かれやすい。
(6) 試験・検査・調整記録
目的: 完成物が「機能している」証拠。
代表例:
自主検査記録(チェックシート)
中間検査・部分検査記録(立会者・結果)
完成検査調書
各種性能試験
土木:載荷試験、水圧試験、通水試験 等
建築設備:空調バランス試験、流量測定 等
電気:絶縁抵抗、耐電圧、保護継電器試験、動作確認、系統切替試験、非常用発電機負荷試験 等
試運転記録
開始・終了日時、条件、結果、指摘事項と是正状況
ポイント:
「試験方法・判定基準・結果・判定・担当者」の4点セットを揃える。
発注者立会が必要な試験は、そのサインをもらっておくと強い。
(7) 法令・許可・届出関係
目的: 工事が関係法令を満たしていることの証明。
工事内容に応じて:
建築確認済証(関連工事の場合)
検査済証、完了検査関係書類
電気事業法関連
使用前自己確認結果、保安規程関連書類 等
消防法関連
防火対象物使用開始届、各種性能試験結果
道路占用・使用許可、河川占用許可 等の完了報告
産廃マニフェストの写し(要求される場合)
ポイント:
「工事完了時点で発注者が保管しておく必要があるもの」を整理して一括綴じ。
許可番号や有効期限の記載漏れに注意。
(8) 維持管理・操作保守関係
目的: 発注者(施設管理者)が、その設備を運用・点検・更新できるようにする。
添付すべきもの:
操作マニュアル(現場仕様に合わせて整理したもの)
日常点検要領、定期点検要領
推奨保守部品・消耗品リスト
メーカー発行の取扱説明書・カタログ
保証書(機器・防水・塗装等)
緊急連絡先一覧(施工者・メーカー)
ポイント:
ベタ貼りのメーカカタログだけでなく、「この現場仕様でどう運用するか」一枚にまとめた要領書があると非常に喜ばれます。
(9) 電子納品(CALS/EC)の場合の必須要素
国交省・一部自治体では電子納品が必須で、以下が定型化されています。�
skr.mlit.go.jp、ほかに 1 件
媒体:CD-R / DVD-R 等
フォルダ構成
発注図
完成図
写真
成績書(品質・出来形)
打合せ簿
その他(取説・実施設計書 等)
管理ファイル(INDEX_C.XML 等)への記入
ファイル名ルール(工事名・種別・連番 等)
ポイント:
紙と電子で二重提出が不要な書類もあるので、要領と監督員指示に従う。
フォルダ名・拡張子・文字コードなど、形式不備で差戻しになるケースが多いので注意。
3. 工種別に「特に添付漏れしやすいもの」
あなたのご専門(電気・設備寄り)も意識して、代表的な抜けやすいものを書きます。
土木工事
ボーリング・土質試験結果
盛土材料の合否判定
法面保護工の材料証明
管路工の勾配・深さ実測表
仮設構台・土留の計算書(要求される場合)
建築工事
コンクリート打設毎の配合報告・試験結果
防水層の仕様・施工要領・試験結果
サッシ・ガラス・建具の性能証明
仕上げ材一覧(品番・色番含む)
電気設備・機械設備工事(ここ重要)
単線結線図/系統図(完成形)
盤面図・回路図・端子表(最終版)
ケーブル一覧(ルート・長さ・サイズ)
接地系統図・接地抵抗測定結果
絶縁抵抗、耐電圧試験成績
動力・制御回路の動作試験結果
自火報・放送・防災設備等の総合試験成績
空調・給排水設備の性能試験・バランス調整記録
PLC・監視装置・リレー設定値一覧、I/O割付表(超重要なのに出てこないことが多い)
4. 実務で「これが揃っていれば恥ずかしくない」チェックリスト
現場でそのまま使えるレベルでざっと挙げます。
表紙・背表紙・総目次
工事概要書
契約書(写)、設計図書一覧、特記仕様書(写)
施工体制台帳(最終)
工程表(当初+最終)
協議書・打合せ簿一覧(必要分添付)
図面一覧表
完成図一式(As-built)
系統図・結線図・詳細図
出来形管理総括表+個別表
品質管理記録(コンクリート等)
材料証明書・機器試験成績書
施工・完成写真(管理簿付き)
自主検査記録(チェックシート)
立会検査・部分検査・完成検査記録
性能試験・総合試験・試運転記録
法令・許可・届出・検査済証関係
操作・保守マニュアル(現場版)
メーカ取説・カタログ、保証書
電子納品データ一式(要領準拠)
これをベースに、**「契約書・仕様書・発注者要領に書いてある“要求書類”で不足がないか」**を一つずつ潰していけば、完成検査や会計検査で致命的に困ることはほとんどありません。



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