太陽光発電が増えすぎると、なぜ電力系統は不安定になるのか

(系統設計・受変電設備エンジニア視点)

再生可能エネルギーの導入が進む中で、「太陽光発電はクリーンで良い電源だが、増えすぎると電力系統を不安定にする」という話を耳にする機会が増えてきました。

一見すると、発電設備が増えることは良いことのように思えますが、電力系統の運用という観点では必ずしも単純な話ではありません。

本記事では、系統設計・受変電設備の実務視点から、なぜ太陽光が増えすぎると系統不安定化が起きるのかを整理して解説します。

電力系統は「常に需要=供給」で成立している

まず大前提として、電力系統は

発電量(供給)

使用量(需要)

が瞬時に一致していなければならないシステムです。

水やガスのように大規模に貯めておくことが難しいため、「使われる量に合わせてリアルタイムで発電量を調整する」という運用が基本になっています。

ここで問題になるのが、太陽光発電の特性です。

太陽光は「出力を制御できない電源」である

火力発電や水力発電は出力を増減できて需要に合わせて発電量を調整できるという特徴があります。

一方、太陽光発電は天候で出力が変動し、系統側から自由に出力調整できない上に短時間で大きく変動するという非制御電源です。

太陽光が少量であれば問題になりませんが、割合が大きくなると晴れた瞬間に発電量が急増したり雲が出た瞬間に急減といった現象が系統全体に影響を与え始めます。

電圧上昇(逆潮流)問題

太陽光が大量に導入された地域では、昼間に地域の消費電力より発電量が多くなることがあります。

このとき、電力は需要側 → 送電系統へ逆流(逆潮流)し、配電線や変電所の電圧が上昇します。

電力系統は通常、上位系統 → 下位系統への電力流れを前提に電圧設計されているため、逆潮流が増えると電圧が規定値を超える他に機器絶縁ストレス増加や、保護装置誤動作などのリスクが発生します。

系統慣性(同期機)の減少問題

これは非常に重要なポイントです。

従来の電力系統では、

火力発電機

水力発電機

といった**回転機(同期発電機)**が多数接続されていました。

回転機は巨大な回転体を持つため、周波数変動を緩やかにして系統の安定度を高めるという役割を持っています。

しかし太陽光発電はインバータ接続であり、回転体を持たないため、系統に接続されても慣性(イナーシャ)を提供しません。

太陽光比率が増えると、周波数変動が急激になり系統事故時の安定度が低下するという問題が発生します。

夕方の急激な出力低下(ダックカーブ問題)

太陽光が大量導入された地域では、典型的な問題として

昼:太陽光で発電余剰

夕方:太陽光が急減

夜:火力発電を急増

という現象が起こります。

この急激な変化は火力発電の追従限界と系統周波数変動、そして運用コスト増加を引き起こし、系統運用を難しくします。これがいわゆるダックカーブ問題です。

系統増強コストが急増する

太陽光が増えると

  • 送電線増強
  • 変電所増強
  • 調整力確保
  • 蓄電池導入

など、系統側設備の追加投資が必要になります。

つまり太陽光は「発電所コスト」だけでは成立せず「系統側コスト」を含めて初めて評価できる電源なのです。

それでも太陽光は必要な電源

ここまで読むと「太陽光は問題だらけ」と感じるかもしれませんが、そうではありません。

太陽光は燃料不要で国内エネルギーであり、分散設置可能で昼ピーク削減に有効という強力な利点を持ちます。

重要なのは太陽光を単独で考えるのではなく、系統全体設計の中で最適量を導入するという考え方です。

まとめ(系統技術者視点の本質)

太陽光が増えすぎると系統が不安定になる理由は、

  • 出力が制御できない
  • 電圧上昇(逆潮流)
  • 系統慣性の低下
  • 夕方の急峻な出力変動
  • 系統増強コスト増大

といった電力系統特有の物理的制約によるものです。

したがって、今後の電力システムは

太陽光・火力・原子力・蓄電池・需要制御

上記を組み合わせた「総合設計」が不可欠になります。

再生可能エネルギーの議論は「賛成か反対か」ではなく、どのように系統と共存させるかという設計問題へと、すでにフェーズが移行しているのです。

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