はじめに
東芝は、日本の重電・社会インフラ領域において長年にわたり中核的な役割を果たしてきた企業であり、特にエネルギーシステムと電力インフラ技術の成熟度において国内屈指の実績を有する。タービン・発電機、変電設備、保護制御システム、さらには系統安定化装置に至るまで幅広いポートフォリオを保有し、国内外の電力会社・大規模需要家に多く採用されてきた。
近年同社は、電力インフラのデジタル化・リモート化・高信頼化という潮流を踏まえ、IEC 61850 に準拠したデジタル変電技術の高度化に注力しており、保護リレー、BCU、HMI など従来の制御システムをデジタルアーキテクチャへ段階的に転換しつつある。本章では、特に IEC 61850 関連製品・技術の位置付けと、国際主要ベンダとの比較における東芝の特徴を分析する。
東芝の電力・変電領域における基盤
東芝の電力変電領域における強みは、以下に大別される。
(1)国内電力会社向け大規模プラント供給の歴史
東芝は長年にわたり 66kV〜275kV 級の屋外変電所・GIS・主変圧器・保護制御装置を一括納入してきた。
(2)機器・制御・系統解析の縦方向統合力
重電機器から SCADA、系統安定化装置まで社内で完結できる点が特徴である。
(3)国内需要家への強いブランド力
国内工場受変電設備等で高い評価を得ている。
東芝の IEC 61850 への取り組みと特徴
東芝は 61850 対応を急激に推進するよりも、既存設備との共存性を重視した実装方針である。
(1)Edition 2 対応リレー製品群
MMS、GOOSE、SCL などに対応し、国内運用文化に最適化した設計が施されている。
(2)BCU の役割分離
保護リレーと BCU の役割を明確に分離し、保守性と操作性を確保している。
(3)変電所全体のデジタル化プラットフォーム
SCADA・ゲートウェイ・保護制御装置を統合したアーキテクチャを提供している。
IEC 61850 業界内での東芝の立ち位置
東芝は革新的最先端というより、国内仕様に適合した安定性重視型の立ち位置にある。
Siemens や Hitachi Energy との比較ではプロセスバス・MU の導入度で差が存在するが、国内顧客への最適化という観点では強みを維持している。
東芝が評価される理由
東芝の 61850 製品が国内で高く評価される理由は以下の通りである。
・既存設備との共存性を考慮した設計
・国内規格への高い適合性
・長期運用前提の堅牢性と保守性
・国内サポート体制の強さ
・変電所一括納入の統合力
今後の展望
(1)プロセスバス・Merging Unit への対応強化
(2)海外市場での存在感向上
(3)国内デジタル変電プロジェクトへの本格参画
おわりに
東芝は“革新より確実性”を重視する国内変電所文化に深く根ざし、61850 時代においても堅実な選択肢として位置する。


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