油変圧器のオンライン監視とは“今起きている変化”を捉える診断である

油変圧器の健全性確認は、従来、定期点検や定期採油といった「オフライン」の分析が中心でした。しかし近年では、変圧器内部の変化をリアルタイム、あるいは準リアルタイムで監視し、予兆段階で異常を把握するオンライン監視技術が急速に普及しつつあります。

特に、大型受変電設備やデータセンター、重要負荷を受ける産業設備では、停止許容度が極めて低いため、突発的な故障や重大事故を未然に防ぐ目的で、オンライン監視を導入するケースが増えてきています。オンライン監視は、言うなれば「いまこの瞬間の変圧器の健康状態」を可視化する診断行為なのです。

油中水分センサと劣化監視

オンライン監視装置には、油中水分を直接測定するセンサが存在します。前述のとおり、油中水分は絶縁性能を著しく低下させる“寿命触媒”であり、含水量の急上昇は極めて危険です。

従来であれば、定期採油でしか把握できなかった水分値を、常時監視することで、

雨水侵入

冷却性能低下

吸湿による急激な絶縁低下

といった異常兆候を早期に検出できます。結果として、不必要な停止を回避しつつ、必要な保全に迅速に移行できる体制を築くことができます。

オンラインDGA(油中ガス分析)

油中ガス分析(DGA)は、内部異常(アーク、部分放電、局部過熱など)を推定する上で、最も信頼性の高い診断手段の一つですが、従来は採油→分析という手順を踏むため、監視は月単位あるいは半年単位でした。

しかし近年では、油中ガスを連続的または高頻度で計測できるオンラインDGAセンサが普及してきています。これにより、異常ガスの突発的な増加をリアルタイムに把握でき、重大事故に至る前段階で運用判断を行うことが可能となります。

特に、CO・CO₂の増加は紙絶縁の過熱や劣化を示唆し、C₂H₂(アセチレン)の急増はアーク系異常の強い指標となるため、オンラインDGAは実質的に“内部事故の予兆監視”として役立ちます。

温度監視と熱状態の予兆把握

油変圧器運転の最も基本的な監視項目が温度です。油温・巻線温度・周囲温度を常時監視することで、負荷状況との相関から熱ストレスの蓄積を推定できます。

温度上昇は、単に運転条件や負荷変動によるものだけでなく、以下のような内部変化の兆候でもあります。

  • 冷却効率低下(スラッジ、熱交換器の閉塞)
  • 巻線の局部過熱
  • 絶縁仕様の劣化
  • フォークトの熱的余寿命の低下

特に、温度監視は長期的な劣化解析に有効で、運転履歴とあわせることで、変圧器寿命評価にも活用できます。

ブッフホルツ継電器(ガス継電器)と油流監視

古典的ではありますが、ブッフホルツ継電器は依然として極めて有効な保護装置です。内部故障が発生した場合、ガス発生や油流変化を検知し、遮断器にトリップ信号を送出することで、重大事故を防止します。

オンライン監視という概念が普及する以前から、ある意味では“アナログ型オンライン監視”として機能しており、現在でも変圧器健全性の最終防護として非常に重要です。

また最近では、ガス量や油流のデータをデジタル収集し、DGAトレンドと組み合わせた高度な診断に活用されるケースも増えています。

負荷状態と長期運転への影響

電力機器において、負荷は本質的に熱ストレスの源です。オンライン監視によって負荷電流や電圧を常時把握すると、次の判断に活用できます。

  • 過負荷運転による熱寿命低下
  • 負荷急増の背景チェック
  • 将来の容量増加への適応性
  • オーバースペック評価

特にデータセンターや大型工場では、季節変動やイベント的負荷増大が顕著な場合があり、オンライン監視データは運転計画や将来拡張計画に関わる経営判断の材料としても機能します。

オンライン監視の価値は“リアルタイム性×傾向”にある

オンライン監視の最大の利点は、時間軸を細かく刻んで変化を追跡できる点にあります。一度の試験値だけで評価するのではなく、変動率、傾向、突発変化を見ることで、異常の予兆や潜在リスクを捉えることができます。

これらのデータは、油の化学分析や電気試験による結果と組み合わせることで、極めて高い信頼性を持つ“総合診断”へと昇華します。つまりオンライン監視は、従来の定期点検を代替するのではなく、定期点検を強化し、予防保全を高度化する技術として位置付けられます。

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