油変圧器の電気試験は「絶縁」「巻線」「構造」の総合診断である

油変圧器の健全性を確認するうえで、化学分析による油の状態把握は極めて重要ですが、それだけで内部の異常すべてを捉えられるわけではありません。電気的な試験は、絶縁性能の実態、巻線の健全性、タップ切換器や導体の状態、さらには機械的損傷の兆候に至るまで、運転に直接関係する“電気装置の本質的な状態”を把握するための手段となります。

また電気試験は、据付直後の受入検査から定期点検、事故後の健全性確認まで幅広く実施され、その結果は運転継続の可否判断や予防保全計画の根拠として扱われます。すなわち電気試験は、変圧器が「電気機器として今なお正常であるのか」を確かめるための中核的な位置付けといえます。

絶縁抵抗測定(IR試験)と吸収特性(DAR/PI)

油変圧器の絶縁は、油・巻線・絶縁紙・構造体など複数要素から構成されます。絶縁抵抗測定では、これら総合的な絶縁の健全性をメガーによって把握します。一次-二次間、一次-外箱間など、想定される絶縁区間ごとに測定を行い、絶縁抵抗値が適切なレベルにあるか、また経年劣化や湿気の影響を受けて低下していないかを確認します。

さらに絶縁抵抗値の立ち上がり特性から、**DAR(Dielectric Absorption Ratio:吸湿比)およびPI(Polarization Index:偏極指数)**を算出することで、絶縁内部の水分量や汚染状況を推定できます。値が低い場合、湿気の侵入、劣化紙、汚染などが疑われるため、油試験結果と合わせて総合判断を行うと精度が高まります。

誘電正接(tanδ)試験

誘電正接試験は、絶縁材料が電圧印加時にどれほどの損失成分(ロス)を持つかを測定する試験であり、絶縁の劣化を総合的に評価する上で極めて有効です。

絶縁材料が健全であれば、印加電圧に対して電流はほぼ位相が90°に近いリアクティブ成分のみとなり、損失は非常に小さくなります。しかし、劣化が進行するとロス成分が増大し、tanδ値が上昇します。

tanδの特徴は、局部的な不具合よりも、絶縁全体の劣化傾向を反映するところにあります。そのため油試験では捉えきれない、絶縁紙・油・構造体全体の“総合指標”として重宝します。

変圧比試験(TTR試験)

変圧比試験は、一次側と二次側の巻数比が設計通りであるかを確認するための試験であり、巻線の短絡、誤結線、タップ切換器の異常などを検出します。

設計値から外れた変圧比が得られた場合、巻線の損傷、タップ位置の誤り、巻数の変化(機械的損傷を含む)が疑われます。特に、落雷・短絡事故・外力などで巻線が影響を受けた可能性がある場合、TTR試験は迅速に内部異常を疑う指標となります。

巻線抵抗測定

巻線の抵抗値を測定することで、接続部の接触不良、導体の劣化、タップ切換器の接点状態などを評価します。

抵抗値は温度補正を行い、設計・過去データと比較します。特にタップ切換器の接触抵抗の増加は、油中金属成分の増加とも関連するため、油分析と併せて異常傾向を判断することが重要です。

短絡インピーダンス測定

短絡インピーダンスは、巻線の機械的健全性を示す重要な指標です。短絡事故などにより巻線が変形、移動、傾斜した場合、磁気回路が変化し、短絡インピーダンスが設計値と異なる値を示します。

特に短絡電流が大きなシステムや、落雷・外力などの可能性がある地域では、短絡事故後に必ず確認すべき試験といえます。機械的損傷を電気的に“見抜く”手段として非常に有効です。

部分放電測定

部分放電は、局部的な絶縁欠陥やボイド、老朽化箇所で発生する微小な放電現象です。部分放電測定では、パルス状の放電電流や電界変動を検出し、局所的な絶縁不良の兆候を把握します。

特に耐電圧試験(Withstand test)では検出できない、微細な局部欠陥の早期発見に有効であり、深刻な故障への成長前にメンテナンス判断ができる点が大きな利点です。ただし、現場ノイズや測定環境に影響を受けやすいため、ノウハウと経験を要する試験でもあります。

電気試験の本質は「総合診断」にある

ここまで述べたように、電気試験は単独の値だけで良否を判断するものではありません。重要なことは、油試験結果、温度履歴、負荷履歴、運転環境などと総合的に比較し、経年変化の傾向から異常の予兆を読み解くことです。

すなわち電気試験は、変圧器が「今どういう状態か」を知るだけではなく、これからも安全に運転できるのか、寿命の終期が近いのか、保全介入が必要なのかといった、長期運用判断の根拠として機能します。

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