― なぜEVTやVTが“突然うなる”のか ―
受変電設備に関わっていると、一度は耳にする言葉があります。
鉄共振(Ferromagnetic Resonance / Ferroresonance)
それは、
・EVTやVTが突然異常電圧を出す
・ブーンという異音がする
・計器が振り切れる
・避雷器が動作する
といった現象を引き起こす、非常に厄介な現象です。
特に、
- 非接地系統
- 長距離CVケーブル
- 真空遮断器使用系統
- 三巻線EVT(オープンデルタ)
で発生しやすい。今回はブログ原稿向けに、原理から実務対策まで整理します。
鉄共振とは何か(定義)
鉄共振とは、飽和特性を持つ鉄心(非線形インダクタンス)と、系統の静電容量が共振する現象です。
通常の共振(LC共振)は、線形インダクタンス Lと静電容量 Cの間で発生します。
しかし鉄共振は、インダクタンスが“非線形”(飽和する)条件が揃うと電圧が異常上昇するという点が本質的に違います。
なぜEVTで起きるのか
EVTやVTは鉄心を持つ変圧器です。
つまり磁束が増えると、ある点で急激に飽和する。この“飽和特性”が問題になります。
そこへ、長距離CVケーブルの対地静電容量と開閉器開放時の浮遊容量が加わると、非線形L × C の共振回路が完成します。
どういう時に発生するか
典型例は以下です。
① 非接地系統:地絡時に健全相電圧が √3倍になる
② 真空遮断器で単相開放:不平衡状態が発生
③ 軽負荷:EVTだけが接続されている状態
④ 長距離CVケーブル:対地容量が大きい
この条件が揃うと、EVTの鉄心が飽和 → 共振 → 異常電圧発生となります。
鉄共振が起きると何が起こるか
✔ 電圧が異常上昇:定格の2〜4倍に達することも
✔ 波形が歪む:正弦波ではなくなる
✔ EVTが異音・発熱:最悪焼損
✔ 避雷器動作:繰り返すと劣化
✔ 保護リレー誤動作
実務では、「なぜか計器用VTだけ壊れる」という形で現れます。
なぜ“普通の共振”より危険なのか
通常のLC共振は、周波数が一致したときだけ発生します。
しかし鉄共振は、非線形特性で複数の安定点を持つため、一度発生すると持続しやすい。
しかも発生条件が曖昧です。
三巻線EVTとの関係
三巻線EVTの三次巻線は、オープンデルタで零相電圧を検出します。
この回路が高インピーダンスで負荷ほぼゼロだと、共振しやすくなります。
つまり、三次巻線電圧が高いほど鉄共振エネルギーも大きくなる傾向があります。
対策(実務で最重要)
① 制振抵抗(ダンピング抵抗)
三次巻線に抵抗を入れることで、エネルギーを熱として吸収。Q値を下げて共振を抑制する。これが最も一般的な対策です。
② 接地方式の最適化
高抵抗接地にすることで、健全相電圧上昇を抑制できます。
③ ケーブル容量の把握
長距離CV系統では、設計段階で容量を計算する必要があります。
④ EVT選定
- 鉄心特性
- 飽和曲線
- 制振抵抗内蔵型
上記の検討が必要です。
なぜ近年増えているのか
以下の理由です。
- データセンター増加
- 長距離地中ケーブル増加
- 真空遮断器の普及
- 高インピーダンス地絡検出
つまり、現代の系統構成が鉄共振を呼びやすいのです。
まとめ
鉄共振とは:非線形鉄心と静電容量が共振し、異常電圧を生む現象
発生しやすい条件:
- 非接地系
- 長距離CV
- 軽負荷
- 単相開放
対策の基本:
- 制振抵抗
- 接地設計
- 容量把握
受変電設計において鉄共振は、「知らなかった」では済まされない現象です。
特に特高・22kV系では、EVT選定と制振抵抗はセットで考えるべきテーマです。


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