― 同期遮断器方式・複数台非常用発電機構成の現場実務 ―
非常用発電設備を有する建物では、商用電源が停電した際に「確実に非常用電源へ切り替わり」、復電時には「安全に商用系へ復帰する」ことが求められます。
この切替の確実性を評価するために行われるのが、停復電連動試験です。
特に近年では、データセンター・病院・公共施設・大規模工場など、複数台の非常用発電機を並列運転するケースが一般的になってきています。
さらに、復電後は受変電設備側の主変圧器二次側遮断器を同期遮断器として使い、系統側と非常用母線を同期投入する方式が増えています。
この記事では、こうした高度な停復電シーケンスを持つ設備の試験ポイントを網羅的に解説します。
また、筆者自身の備忘録としても役立つよう、試験手順・注意点・実務上の落とし穴まで詳しくまとめました。
停復電連動試験とは何か?
停復電連動試験とは、一言で言えば
「商用電源が切れた瞬間から復電して安定運転に戻るまでを、シナリオ通りに正しく動くか総合的に確認する試験」です。
実際には次の3つのフェーズに分かれます。
Aフェーズ 停電 ⇒ 非常用運転への切り替え試験
Bフェーズ 非常用発電機の並列(3台)による島運転状態の確認
Cフェーズ 復電 ⇒ 同期投入 ⇒ 負荷受渡し ⇒ 発電機停止までの試験
これらすべてが“一連の流れとして正しく動くか”を確認するのが停復電試験の本質です。
今回の想定システム構成
この記事は次の構成を前提として書いています。
- 商用系:特高/高圧受電
- 主変圧器二次側が同期遮断器(系統側との連系点)
- 非常用発電機:3台並列(島運転可能)
- 停電時は3台の非常用発電機で非常用母線を形成して負荷へ給電
- 復電時は主変二次側遮断器を同期投入し、系統と非常用母線を並列接続
- 並列運転ののち、負荷を系統側に受け渡して発電機を停止
データセンター・病院・大学関連施設・その他官庁設備などでよく採用される方式です。
停電時の動作試験(Aフェーズ)
3-1. 商用電源の喪失検知
停電シーケンスは、VTによる電圧監視から始まります。
三相電圧の低下→欠相判定→周波数異常
これらが設定値を下回ったとき、受電遮断器(VCB/ACB)が自動開放します。
ここで重要なのは、
■ 正常な停電判定でのみ動作しているか?です。
保護協調が崩れていると誤動作の原因になります。
3-2. 主遮断器開放(受電遮断器トリップ)
商用電源が失われたことを確認したら、設備は「商用電源を切り離す」動作に入ります。
受電遮断器が適切にトリップ→遅延タイマが設定通りに動作する→開放後の母線が完全に無電圧であること
島運転に入る前の必須確認です。
3-3. 非常用発電機の始動
仮に今回の設備は3台の非常用発電機があるとします。
試験では次の確認が必要です。
- 3台同時起動か、優先順位ありの起動か
- 1台起動失敗時に他の台がバックアップ起動するか
- 起動後の油圧・水温・回転数が正常か
- 無負荷電圧・周波数が基準値内か
非常用発電機はディーゼルが多く、始動不良は非常によくあるため丁寧に確認します。
3-4. 3台並列による島運転の確立
非常用母線へ電力を供給するため、発電機は並列運転します。
並列投入の確認
1台目:母線を形成
2台目・3台目:同期後に並列投入
同期条件(ΔV・Δf・Δφ)が適正か
■ 島運転の安定性確認
- 周波数 droop による kW負担割合が適正か
- AVR により無効電力が正常に分担されているか
- ステップ負荷に対して周波数が維持できるか
3台構成では、分担バランスの崩れやすさが盲点となります。
復電後の「同期投入」試験(Bフェーズ)
復電後は、主変圧器一次側が系統に接続され、二次側は充電されます。
しかし、非常用母線とはまだ切り離されています。ここで同期投入の準備が整います。
4-1. 復電の判定
- 系統側電圧が定格の ±10%以内
- 周波数が ±0.5Hz 程度に安定
- 復電遅延タイマが設定どおり
特に、短時間の瞬時復旧で誤投入しないための「遅延タイマ」は重要です。
4-2. 同期チェックリレー(25)の役割
主変二次側同期遮断器が投入されるには、同期条件が揃わなければなりません。
- 電圧差 ΔV
- 周波数差 Δf
- 位相差 Δφ
- 相順(RST/UVW が一致していること)
これを判定するのが**同期チェックリレー(25)**です。
ここでのチェックポイントは、25 が許可する条件が適切か? 25 が不成立のとき絶対に投入されないか?
という点です。
4-3. 主変二次側同期遮断器の同期投入
同期投入は次の流れで行われます。
DG(非常用発電機)側の周波数を制御→系統側周波数との差を ±0.1〜0.2Hz に近づける→ΔV・Δφ も許容範囲に入った瞬間→同期遮断器を「パチン」と投入→投入直後のポイント→循環電流が発生していないか→発電機の負荷が急変していないか→母線電圧・周波数が乱れていないかです。
同期投入は事故原因になりやすいため、最も慎重に確認すべき工程です。
並列(連系)後の負荷受け渡し試験(Cフェーズ)
同期投入が成功すると、設備は系統と非常用発電機の並列運転になります。
その後、負荷を商用側に戻していきます。
5-1. kW(有効電力)分担の評価
並列運転直後は、発電機が一定の電力を持っているため、
- ガバナの指令値を下げて kW を徐々に減らす
- 系統側が負荷を肩代わりするように誘導する
という作業が必要です。
発電機の負荷が0〜5%程度になると、遮断器を開放する準備が整います。
5-2. kVar(無効電力)分担の評価
AVR により異なる電圧設定の発電機があると、
- 無効電流の偏り
- 発電機1台だけが大量の励磁電流を流す
といった危険な状態になります。並列運転中は必ず、kVar(無効電力)もチェックします。
5-3. 発電機遮断器の開放 → クールダウン
- 発電機遮断器を開放し、負荷を系統側に完全に受け渡したら、
- 無負荷のまま3〜5分のクールダウン
- 温度が落ちてからエンジン停止
という工程を踏みます。
異常系の試験・確認項目
実務では、正常系だけでは不十分です。
現場で起こり得る“異常シナリオ”も検証します。
6-1. 同期不成立時の挙動
ΔV・Δf・Δφ が許容値に入らない
→ 同期遮断器は絶対に投入されないこと
→ シーケンスがタイムアウトしてアラームとなること
同期誤投入は最悪の事故(大電流・短絡)になるため必須確認。
6-2. 系統再停電時の復帰シーケンス
同期投入前に系統が再度停電する場合、
復電シーケンスは一時停止→発電機は引き続き島運転→系統復旧後再度同期を試す
という「リトライ方式」が一般的です。
6-3. 発電機1台トリップ時の挙動
島運転中に1台トリップすると、
- 残り2台で負荷を支えられるか
- droop特性により周波数が安定するか
- 負荷の一部遮断が必要か
これを調べておかないと、実際の停電時に障害が発生します。
7. 試験のチェックシート化のすすめ
停復電試験は工程が多く、人的ミスも多いため、
Excel でチェックシート化して試験するのが最も安全です。
例えば以下のような構成です。
- No
- 試験区分(停電/同期/並列/復電)
- 試験項目
- 試験内容
- 判定
- 備考
この記事の内容をそのまま Excel に展開することで、現場で使える実務的な試験書になります。
まとめ:同期遮断器方式の停復電試験は難易度が非常に高い
今回解説したように、同期遮断器方式(主変二次側同期投入)かつ3台発電機構成の停復電試験は、
- 試験項目が多い
- インターロックが複雑
- 分担バランスが崩れやすい
- 同期投入は特に危険性が高い
という特徴があります。
しかし、きちんと設計・施工され、丁寧に試験が行われていれば、
停電時には確実に電気を供給し、復電時も安全に商用側へ復帰できる、非常に信頼性の高いシステムになります。


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