距離継電器(Distance Relay)は、送電線の故障点までのインピーダンス(距離)を測定し、故障位置を判断して遮断器を動作させる継電器です。送電線保護の中核であり、過電流継電器では区別できない遠方故障を高精度で判定できる点が特徴です。
1. 距離継電器の原理
送電線1相当たりのインピーダンスをZ=V/Iとすると、故障が線路上で発生した場合、その点までの距離に比例したインピーダンスが得られます。距離継電器はこの測定インピーダンスと整定インピーダンスを比較し、設定範囲内であれば動作するという仕組みです。
2. 動作特性
代表的な特性には、インピーダンス特性、モホ特性(Mho)、リエクタンス特性、四辺形特性があります。モホ特性は方向判別機能を備え、送電線の長距離保護に適しています。
3. ゾーン設定
距離継電器は通常、3ゾーンに分けて整定します。
第1ゾーン:被保護線路の80~90%をカバーし即時動作。
第2ゾーン:被保護線路全体+後続線路の50%を約0.4秒で動作。
第3ゾーン:さらにその後続線路を含め、約1秒の遅延で動作。
4. 整定計算例
被保護線路A-B 100km、インピーダンスZ=0.3+j3.0Ω/km、後続線路B-C 80kmとすると、
Z_AB=30+j300=301.5Ω
第1ゾーン:Z1=0.9×301.5=271.4Ω
第2ゾーン:Z2=301.5+0.5×241.2=422.1Ω
第3ゾーン:Z3=542.7Ω
整定時間はZ1=0s、Z2=0.4s、Z3=1.0sが代表的です。
5. デジタル距離継電器
近年はマイクロプロセッサ化が進み、IEC61850通信対応、イベント記録、自己診断、再閉路連携など多機能化。デジタル変電所の中核装置として運用されています。
6. 主なメーカー
| メーカー | 代表機種 | 特徴 |
| 富士電機 | GRZ200, MICRELEX Z | 国内特高変電所で広く採用 |
| 三菱電機 | 7S/7SJシリーズ | ディジタル保護継電器群 |
| 東芝 | GRD100, GRC200 | 方向要素付送電線保護 |
| Hitachi Energy | REL670シリーズ | IEC61850完全対応 |
| GE Grid Solutions | D60 | 北米系標準機 |
| Schneider Electric | MiCOM P443 | 四辺形特性対応 |
| Siemens | SIPROTEC 5 (7SA87x) | IEC61850 Ed.2対応 世界標準 |
7. 整定計算時の注意点
・CT・VT比を正確に反映すること(二次側換算が必須)
・系統構成の変更時は整定値の見直しを行うこと
・高抵抗地絡系統ではリエクタンスまたは四辺形特性を採用
・線路試験やオシログラフ解析による検証を行うこと
8. まとめ
距離継電器は送電線のインピーダンスから故障位置を検出する重要な保護装置です。近年はデジタル化と通信対応が進み、IEC61850に基づくスマート変電所の要となっています。


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