小さすぎる67N整定は危険|常時スピルとケーブル充電電流がなぜ誤動作を生むのか

特高受変電設備では、地絡保護の確実性と誤動作防止の両立が重要となる。
しかし現場では「整定値は小さいほど感度が良い」と誤解され、結果として常時スピルやケーブル充電電流、高調波ノイズにより67Nが不用意に動作するケースが後を絶たない。
本記事では、なぜ小さすぎる整定が危険なのか、その電気的背景を明確に説明する

はじめに:なぜ67N整定は難しいのか

特高受変電設備における保護協調の中でも、67N(地絡方向継電器)の整定は誤動作防止と事故切り離しの確実性を両立する上で最も判断が難しい領域のひとつである。

しばしば「感度を高めるために整定電流は小さいほど望ましい」と誤解されるが、実務では逆である。
零相電流は、CT誤差・ケーブル充電電流・母線構成・接地方式などの影響を受け、必ず微小だが無視できない「常時スピル」として存在する。
そのため、整定を小さくし過ぎると誤動作を誘発し、停電範囲拡大や不要遮断に直結する。

以下では、変流器の励磁特性・微小電流域の誤差挙動・67N方向要素の信号構造を図を用いて整理し、最後に特高受変電設備における実務的な整定アプローチを提示する。


CTと零相電流の基本


CTは一次側の大電流 I1 を二次側の小電流 I2 へ比例変換する変成器である。理想的には

I2 = (N1 / N2) * I1

が成立する。しかし実機では鉄心の励磁が必要であり、励磁電流 Ie が加わるため:

I1 = (N2 / N1) * I2 + Ie

すなわち、比誤差および位相誤差は「完全にはゼロにならない」ことが前提である。

CT飽和と膝点電圧が方向判定に与える影響


鉄心は磁束密度が飽和領域に達すると、励磁電流が急増し、二次電流 I2 が一次電流に追従できなくなる。この状態を CT の飽和と呼ぶ。

二次必要電圧は次式で近似できる:

V2 ≈ I2 × (R配線 + R負担)

この V2 が励磁特性試験で得られる膝点電圧 Vk を上回ると飽和が発生しやすい。

常時スピルとケーブル充電電流の正体


零相電流は、三相電流の和として定義される:

3I0 = Ia + Ib + Ic

しかし、三相CTの比率誤差 δ のわずかな差が積み重なると、地絡が無い状態でも

I_spill ≈ δ × I負荷

のような残差(常時スピル)が現れる。

小さすぎる整定で起きる誤動作シナリオ


67Nは零相電流 3I0 と零相電圧 3V0 の位相関係から地絡方向を判定する。
しかし整定を小さくし過ぎると、常時スピル・ケーブル充電電流・外部事故時のCT飽和過渡により誤方向・誤動作の危険が高まる。

5. 特高受変電設備における再現性のある整定手順


1) 常時零相電流を平常運転・母線切替時・季節差を含めて実測する。
2) その最大値 × 2〜3 を整定電流の下限候補とする。
3) 最小想定地絡電流(高インピーダンス故障ケース)を確実に拾えるか確認する。
4) 外部事故時のCT飽和を想定し、方向判定の位相安定度を確認する。
5) 上下位保護・隣接系統との協調を行う。

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