ラダー言語だけの世界から一歩踏み出すために
現場でPLCを扱う技術者の多くは、ラダー言語を中心に設計している。シーケンス制御における直感性、保守性、読みやすさ──これらの理由から、ラダーは今も根強い人気を誇る。だが同時に、多くの技術者が「ラダーの枠の中」で完結してしまっている現状も否めない。
PLCのプログラムは、電気図面と一体で考えることが多い。入力(I)、出力(Q)、タイマ、カウンタ、内部リレー、これらを順序良く並べることで制御が完結する。しかし――変数(Variable)という概念に本格的に触れる機会は、驚くほど少ない。
変数という壁を超えられない理由
変数を使った制御は、構造化プログラミングの入り口でもある。だが、ラダー文化に慣れた技術者にとって、「X001」や「Y010」といったI/O番号の世界から、「bool StartButton」や「int Counter」へ移るのは心理的にも技術的にも距離がある。
そして何よりの障壁は、“ハードウェア”である。PLCそのものは高価で、個人で購入するには現実的でない。メーカーによって専用のソフトが必要で、学習環境を整えるのも容易ではない。結果として、変数や構造体、ファンクションブロックといった考え方に触れる機会は、「会社の制御盤設計では必要ないから」と見送られてしまう。
ラズパイとOpenPLCがもたらす現実的な一歩
そこで登場するのが、Raspberry PiとOpenPLCの組み合わせだ。ラズパイは数千円で手に入る小型コンピュータで、GPIOを介してI/O制御が可能だ。これにオープンソースのPLCランタイム「OpenPLC」を導入すれば、驚くほど簡単に“PLCらしい操作感”で制御を実現できる。
たとえば、OpenPLC Editorでラダーを書き、ラズパイに転送するだけで、デジタル入力をトリガにリレーやLEDを制御できる。この「自分の書いたロジックでI/Oが動く」体験は、高価なPLC環境がなくても十分に味わえる。
しかも、OpenPLCはIEC 61131-3準拠であり、ラダーだけでなく、ST(Structured Text)やFBD(Function Block Diagram)にも対応している。つまり、ラダー中心の思考から変数中心の構造化思考へと自然に橋渡しできるのだ。
海外PLCに近い“操作感”と“思想”
OpenPLCはその名のとおり、欧米のPLC文化に近い設計思想を持つ。モジュール構成、変数の扱い、ファンクションブロックの挙動などは、Allen-BradleyやSiemensの環境に触れたことがある人なら違和感なく使えるだろう。
つまり、ラズパイでOpenPLCを触るということは、「海外PLCの感覚を、低コストで体験できる」ということにほかならない。日本のラダー中心文化にいながら、グローバル標準の構造化制御を体験できる貴重な環境だ。
“変数”を体で覚えるということ
変数とは、単なる“名前を付けた箱”ではない。システムの状態を抽象的に表現し、構造化・再利用可能な制御を実現するための鍵である。
たとえば、
if StartButton and not StopButton then
MotorRun := TRUE;
end_if;
この数行を理解できれば、PLCの設計思考は大きく変わる。ON/OFF信号を図形的につなぐ世界から、「論理を言語で表現する」世界へと進化するのだ。
PLC屋の未来に必要な“ラズパイ的実験”
ラズパイとOpenPLCは、決して“おもちゃ”ではない。小規模な装置制御、試作盤、IoT連携など、実務にも応用できる。だがそれ以上に大きいのは、「学習環境としての価値」である。
PLCエンジニアが変数、通信、構造化言語に慣れる最初の一歩として、これほど現実的な環境はほかにない。ハードの自由度が高く、LANやModbus通信の練習にも最適。しかも、手元のPCひとつで制御ロジックを動かせる手軽さがある。
結論:ラズパイで“構造化の第一歩”を踏み出そう
PLC技術者が、ラダーだけの世界に留まるのはもったいない。ラズパイとOpenPLCを使えば、構造化制御や変数操作、通信制御といった“次の時代の制御設計”を自分の手で体験できる。高価なPLCがなくても、自分のI/Oで、自分の手で、論理を「動かす」ことができる──それがラズパイとOpenPLCの最大の魅力である。
是非次のページを参考にOPENPLCをお試しください




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