リレーからMOSFETに置き換えるときの注意点—メカスイッチから電子スイッチへ、移行時に見落としがちな5つのポイント—

近年、制御盤や機器設計の現場では「メカリレーをMOSFETに置き換える」動きが加速しています。

理由は明確で、寿命・スピード・省エネ・静音・小型化のすべてで電子化が有利だからです。

しかし、単純に“リレーをFETに変えるだけ”では済みません。

構造も動作原理もまったく異なるため、設計上の注意点を押さえておかないと、思わぬトラブルを招きます。

ここでは、実務的な観点から置き換え時に注意すべき代表的なポイントを整理します。

1. 「完全な絶縁」がなくなる

リレーの最大の強みは「コイル回路と接点回路が電気的に絶縁されている」こと。

MOSFETは半導体内部でスイッチングを行うため、絶縁がない(またはフォトカプラ等で別途確保する)点が根本的な違いです。

たとえばPLC出力をMOSFETにした場合、出力と内部電源が共通グラウンドになります。

したがって、

系統が異なる回路を同一GNDで接続してはいけない

絶縁リレーの代わりにそのままMOSFETを入れると、ノイズやグラウンドループが発生する

という問題が起きます。

→ 絶縁が必要な箇所は「フォトMOSリレー」や「光アイソレータ+FET構成」で対応しましょう。

2. オン抵抗(Rds(on))の存在を意識する

リレーの接点は、オン時の抵抗がほぼゼロ。

一方でMOSFETはオン状態でも微小な抵抗(Rds(on))が存在します。

この抵抗が大電流用途では無視できず、

電圧降下(V = I × Rds(on))

発熱(P = I² × Rds(on))

として現れます。

例:10Aを流し、Rds(on)=0.05Ωなら、

→ 0.5Vの電圧降下、5Wの発熱。

→ ヒートシンク設計や放熱経路を確保する必要があります。

3. サージ電圧・逆電流への対策が必要

リレーの場合、接点のアークで自己消弧してくれることもありますが、MOSFETはそうはいきません。

特に**誘導負荷(コイル・モータ・ソレノイドなど)**を切る際、逆起電力によるサージがFETを一瞬で破壊します。

MOSFET内部には順方向のボディダイオードがあるものの、逆方向や高エネルギーのサージは吸収しきれません。

したがって、

フライホイールダイオード(整流ダイオード)を外付け

RCスナバやTVSダイオードを追加

インダクティブ負荷には余裕電圧を設計

など、リレーよりも保護回路を慎重に設ける必要があります。

4. オフ時のリーク電流を考慮する

リレーは接点が物理的に開くため、オフ時の漏れ電流はゼロ。

一方、MOSFETは半導体構造上、わずかなリーク電流(nA〜μA程度)が流れ続けるのが普通です。

このため、

高インピーダンス入力の回路

微弱電流で誤動作する機器(例えばセンサ入力)

では、“切ったはずなのに完全に切れない”症状が出ることがあります。

→ リーク電流が問題になる場合は、FET出力ではなくフォトリレーやメカリレーを残す選択肢も検討。

5. 負荷の極性と回路構成を確認する

MOSFETは極性をもつ素子です。

接点リレーのように「どちらの極でもOK」ではありません。

NチャネルMOSFET:ソースをGND側に置く(ローサイドスイッチ)

PチャネルMOSFET:ソースを電源側に置く(ハイサイドスイッチ)

誤って逆向きに接続すると、ボディダイオードを介して電流が流れっぱなしになります。

特に24V系DC出力の置き換え時は、

ハイサイドかローサイドかを正確に判断してデバイスを選ぶことが重要です。

6. まとめ:電子化は便利だが“万能ではない”

リレーをMOSFETに置き換えることで得られるメリットは多大です。

・機械的摩耗がない(長寿命・メンテ不要)

・無音・高速応答

・省スペース・省電力

しかし、同時に

・絶縁がない

・漏れ電流がある

・サージに弱い

・極性がある

という“電子スイッチならではの落とし穴”が存在します。

つまり、「動かす」だけなら簡単でも、「信頼して使い続ける」には保護設計が欠かせません。

7. 技術者の視点から

リレーからMOSFETへの置き換えは、単なる部品交換ではなく設計思想の転換です。

「接点を閉じる」から「電子的に電流経路を形成する」へ。

その変化を理解しておくことで、

PLC出力回路・電源制御基板・FA装置・車載制御など、あらゆる分野で設計の自由度が一気に広がります。

電子スイッチに置き換えた瞬間から、

「機械的制約のない世界」=「設計者の腕が問われる世界」が始まります。

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