― 電力保護・制御分野における“堅実な技術基盤”と“グローバル浸透力” ―
1.GE社の企業概要
GE(General Electric)は1892年に創業された米国を代表する多国籍企業であり、電力・エネルギー、航空、医療、産業機器など幅広い領域で展開してきた総合エンジニアリング企業である。近年は事業再編が進み、航空・電力・医療に重点を置いたコア事業構造へとシフトしているが、その中でも**電力保護・制御分野(GE Grid Solutions)**は、世界的に高い信頼性を獲得している事業領域として知られる。
GE Grid Solutionsは旧・GEC Alstomの系譜を受け継ぐため、ヨーロッパ系の電力保護技術と北米のユーティリティ文化が融合した独自の技術基盤を有している。特に保護継電器、BCU(Bay Control Unit)、サブステーション・オートメーション、通信ゲートウェイ、監視制御装置において世界的なプレゼンスを持ち、IEC 61850分野では主要ベンダの一角を占めている。
2.GEのIEC 61850 製品ラインの特徴
GE社は、IEC 61850対応IEDとして「Multilin シリーズ」を提供しており、方式設計の自由度・高機能性・互換性の高さで評価される。代表製品には以下が含まれる。
- Multilin B30:母線・ライン兼用の保護IED(分散型母線保護対応)
- Multilin C650:BCU(Bay Control Unit)としての高い用途汎用性
- Multilin URシリーズ:リレー保護全般に対応する主力プラットフォーム
- MU(Merging Unit)、ゲートウェイ、SCADA向け制御装置
これらはIEC 61850 Ed.1 / Ed.2の双方に対応し、MMS・GOOSE・Sampled Valuesに広く適合し、特にGOOSE運用の安定性・設定自由度の高さは業界でも高評価である。
3.IEC 61850分野での業界内ポジション
IEC 61850 の世界では、主要ベンダとして下記が挙げられる。
- SEL(Schweitzer Engineering Laboratories)
- GE(General Electric)
- Siemens
- ABB(現Hitachi Energy)
- Schneider Electric
この中でGEは**「技術的堅牢性と実績に基づく“中核プレイヤー”」**という位置づけにある。特に以下の3点で存在感が大きい。
(1)北米・中東・アジアでの普及率が高い“グローバルスタンダード”
SELが北米で圧倒的なシェアを持つのに対し、GEは北米・中南米・中東・インド・ASEANなど多地域でバランスよく普及している。
特に**発電所・送電・変電・工業プラントを問わず設備構成に馴染みやすい“汎用的な設計思想”**が受け入れられている。
(2)母線保護・分散型保護ではSEL/Siemensと並ぶ強力な選択肢
B30などの母線保護IEDは、分散型母線保護構成で高い評価を受けており、以下の特性が特徴的である。
多数の保護要素を統合
柔軟なECG/GOOSEロジック
大規模変電所にも適合できるモジュール性
BCU(C650)との親和性が高い
特にSEL-487Bとの比較で、設定自由度、BCUとの統合性の面で選定理由になるケースが多い。
(3)BCU(C650)の“堅牢性・設定自由度・多用途性”は業界上位
GEのC650は、制御点数・論理の柔軟性・IEC 61850の適合性で業界の中でも屈指であり、
**SiemensのSICAM、ABBのRECシリーズと並ぶ「世界三大BCU」**の一角を占めると評価される。
特にC650は以下の特徴から、日本国内の受変電設備でも採用実績が増えている。
- 100ms級の高速GOOSE応答
- 制御・連絡・保護の一部ロジックを同一デバイスで完結
- ベイレベルの集中ロジックが他社より組みやすい
- HMI向け設定の自由度が高い
- Ed.2完全対応で国際案件の要求を満たせる
4.GE製品の技術的評価 ― 強みと留意点
GEのIEC 61850製品は客観的に以下のように評価できる。
■ 強み
製品ラインナップが広く、保護・制御・通信機能を全階層で網羅
母線保護・ライン保護の実績が豊富で、特に分散型構成に強い
BCU(C650)が高機能で、複雑な方式に柔軟に対応可能
海外案件の要求仕様(NERC、IEEE、IECなど)に強い
GOOSE通信の安定性・ロジック機能の自由度が高い
■ 留意点
設定ツール(EnerVista Suite)が多機能ゆえに操作難度が比較的高い
UIや設定思想が北米文化のため、欧州系(Siemens/ABB)とは感覚が異なる
本体価格は中堅〜高価格帯で、安価ではない
とはいえ、GEは“堅実に設計されたIED”として世界的な信頼性が高く、
特に母線保護+BCU構成では**「標準解」としてのベンダ地位**を確立している。
5.IEC 61850時代におけるGEの存在意義
IEC 61850導入の成功要因には、
IEDの相互運用性
通信の信頼性
ロジック構築の容易性
BCUの柔軟性
設計の標準化
が大きく影響するが、GEはこの全てに対し平均以上、
特に保護+制御+通信の統合設計がスムーズである点が高く評価できる。
加えて、国際案件においては**“GE製品で設計されている方が安心できる”**と判断されるケースも多く、
高電圧・大容量の送変電設備では依然として確固たる影響力を持つ。
6.まとめ
総じて、GEのIEC 61850製品は世界的な実績・堅牢性・多用途性を背景に、
保護・制御分野の中核を担う存在として業界内で確固たる地位を維持している。
特に以下のポイントで評価が高い。
発変電を問わず“汎用的に使える”
分散型母線保護/ライン保護で強い
BCU(C650)が業界上位の柔軟性
GOOSE通信の安定性
国際案件で要件を満たしやすい
IEC 61850を基盤とした次世代デジタル変電所の構築において、
GEは今後も主要ベンダとして存在感を示し続けると考えられる。



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