Schneider Electric の企業紹介と IEC 61850 分野における業界的立ち位置

― エネルギーマネジメントの総合プラットフォーマとしての存在感 ―

Schneider Electric の企業概要

Schneider Electric(以下、Schナイダー社)は、1836 年創業にまで遡る歴史を持つ、フランスに本拠を置くエネルギーマネジメント・産業オートメーション領域の世界的リーディングカンパニーである。同社は重電メーカーとしての側面を保持しつつも、近年では明確に「エネルギー効率」「デジタル化」「サステナビリティ」を軸としたソリューション企業へと舵を切っており、従来型の制御・配電機器をベースとした装置販売型ビジネスから、管理ソフトウェア、データプラットフォーム、クラウド連携、サイバーセキュリティまでを包括したサービスビジネスへ領域を拡張している。

特に配電領域での代表ブランドである 「Easergy」「EcoStruxure」 は、国際規格 IEC61850・Modbus・DNP3 を中心としたオープンプロトコルへの対応を基盤とし、サブステーションから工場・ビルディングオートメーションに至るまで、幅広い系統・電圧階級へ適用可能な柔軟性を備えている。

同社の強みを端的に整理すると、以下の三点に集約される。

エネルギーマネジメント領域の総合力(受変電設備、低圧〜高圧配電、産業制御までの広範な製品ライン)

グローバル展開による圧倒的な導入実績(欧州・中東・アジアなど地域ごとに最適化された製品供給)

デジタルプラットフォーム EcoStruxure による上位システム統合力(監視・保全・分析を一体化した運用管理)

これらの要素により、Schneider Electric は「重電メーカー」としてだけでなく、「エネルギーマネジメントのプラットフォーマー」としての存在感を示している。

IEC 61850 製品ラインの特徴

Schneider Electric は早期から IEC61850 を自社製品アーキテクチャの中核に据えており、GOOSE、MMS、サンプル値、サイバーセキュリティ、SMV 同期など主要要件を順次実装してきた。また、制御・保護・監視を統合した「IED+SCADA+クラウド」型の設計思想を持つ点は、従来型の“保護継電器×BCU”を主軸とするメーカーとは異なる独自の進化を遂げている。

代表的な IEC61850 対応製品は以下のとおりである。

Easergy P3 / P5 シリーズ

 送電・配電用途の保護継電器。GOOSE / MMS に対応し、配電自動化・変電所デジタル化に適合。

Easergy T300(または前身のFlair/Tシリーズ)

 フィーダ自動化(DA)用途の RTU/IED。SCADA 連携と IEC61850 Gateway 機能を持つ。

MiCOM シリーズ(旧 Alstom Grid → 旧 AREVA → Schneider)

 歴史的に欧州で高い実績を持ち、送電用保護から GIS 含む高電圧設備まで対応。

EcoStruxure Substation Operation

 サブステーション監視・運用の上位システム(DCS・SCADA)。

 ローカル〜クラウドまで階層的に統合。

これらを組み合わせることで、「IED、BCU、RTU、SCADA、クラウド保全」まで一貫して自社で構築可能という点が、他社と比較した際の強い差別化要因となっている。

IEC61850業界における Schneider Electric の立ち位置

IEC61850 の世界市場では、主に以下の四つの勢力が存在している。

欧州・国際規格主導型(Siemens / ABB / Schneider / GE)

北米実装最適化型(SEL)

アジア拡大型(日立、東芝、韓国、中国系)

クラウド・AI 連携を強化する新興勢力

この中で Schneider Electric の特徴は、**「広い階層を一社で完結させるプラットフォーム指向」**にある。

● (1) Siemens との比較

Siemens が“変電所の完全デジタル化(SIPROTEC+SCALANCE+DIGSI)”で世界を牽引するのに対し、Schneider は

「配電領域〜工場・ビルまで同一アーキテクチャで統一する」

というアプローチを取り、適用領域の幅広さで勝負している。

そのため、送電用途での絶対的シェアでは Siemens に一歩譲るが、中電圧以下の実装密度と普及速度では非常に強い。

● (2) ABB / GE との比較

ABB・GE が送電〜HV 設備の堅牢性・高機能保護に特化した歴史を持つのに対し、Schneider は

「保護」+「監視」+「エネルギーマネジメント」

= 運用最適化までを包含したソリューション型

で差別化している。

特に EcoStruxure によるデータ統合は、単体機器としての IED 性能を超えて、上位層で価値を生む構造が強い。

● (3) SEL との比較

SEL は北米での“堅牢性・信頼性・発電所/送電用途”に強く、保護リレーの性能面では非常に高評価である。

対して Schneider は、中電圧〜配電系統・スマートグリッドでの実装密度が高く、

IEC61850 の「上位システム統合」「フィールドの DA 化」「可視化・保全」が得意領域といえる。

Schneider Electric の強みと将来的な方向性

● (1) エネルギーマネジメントを軸としたデジタル統合

EcoStruxure を中心としたアーキテクチャにより、

  • 変電所(サブステーション)
  • 配電自動化(DA)
  • 工場、ビルディング、データセンター

などあらゆる現場データを統合し、AI/クラウド活用による予兆保全へ一気通貫で対応できる。

● (2) 中電圧以下での圧倒的な実装力

Schneider は RMU(リングメインユニット)や配電変圧器、開閉器など中電圧設備に強い歴史を持つため、IEC61850 の DA 実装・配電最適化との親和性が高い。

近年世界的に進む 分散電源(DER)・再エネ・VPP との接続点で存在感が大きい。

● (3) サイバーセキュリティとクラウド基盤

同社は NERC CIP や IEC 62443 など国際的な OT セキュリティ標準への対応が早く、

IEC61850 × サイバーセキュリティ × クラウド運用

の領域では、他社に先んじている部分が多い。

■ 5. 総括:Schneider Electric の IEC61850 市場での位置づけ

Schneider Electric は IEC61850 市場において、

「守備範囲の広さ」「ソフトウェア統合力」「中電圧〜配電の強さ」

という三つの軸で、明確な独自ポジションを確立している。

Siemens や ABB ほど“超高電圧・大規模送電”に尖ったメーカーではない

SEL のように“保護リレー単体の強さ”で市場を席巻するタイプでもない

GE のような“発電〜送電の伝統的強み”とも異なる

それでも、

「配電〜産業系の電気インフラを IEC61850 で一体化する」という実務上の効率性

を世界的に推進している点で、Schneider Electric は唯一無二の存在である。

特にデジタル化と脱炭素が加速する現在、EcoStruxure×IEC61850 の組み合わせが、変電所と工場の境界を消していくという潮流は今後ますます強まるだろう。

同社は今後も、エネルギーマネジメントとデジタルサブステーションの中間に位置する“運用”の領域で、国際的なリーダーシップを発揮すると考えられる。

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