電気主任技術者を“消耗職”にしないために

――責任だけを背負わされないための現実的な考え方

電気主任技術者という仕事は、

制度として見れば「電気設備の安全を守る最後の砦」であり、

技術者としては極めて重要な役割を担っています。

しかし現実には、

「責任は重いのに、裁量がない」

「事故がなくても評価されず、事故があれば全責任」

という構造に陥りやすく、

結果として“消耗職”になってしまうケースが少なくありません。

問題は、主任技術者という職種そのものではなく、

その体制・権限・運用思想が間違っていることにあります。

本記事では、

主任技術者を消耗職にしないための「体制・権限・運用思想」と

現場でよくある具体例を交えながら、丁寧に解説します。

なぜ主任技術者は消耗しやすいのか

「責任」と「決定権」が分離されている

消耗する主任技術者の職場には、共通点があります。

設備更新の最終判断は経営

予算配分は管理部門

運用ルールは現場任せ

しかし事故時の責任は主任技術者

つまり、決められないのに、責任だけを負う構造です。

この状態では、 どれほど真面目で優秀な技術者でも、

精神的にすり減っていきます。

消耗職にしないための体制・権限・運用思想①

「複数人体制」を前提にする

悪い例(よくある)

  • 主任技術者:1名
  • 副・代務:形だけ、実務未経験
  • 点検も資料も全て一人で把握
  • この状態は、

事故が起きなくても既に危険です。

良い体制・権限・運用思想例

  • 主任+副主任(または代務者)を明確に定義
  • 年1回以上、役割交代で実務を回す
  • 点検立会・操作手順を複数人で共有

これだけで、

  • 休める
  • 判断を相談できる
  • 属人化が防げる

主任技術者は「一人で背負う役職」ではありません。

体制・権限・運用思想を怠ると、それ自体がリスクになります。

消耗職にしないための体制・権限・運用思想②

「設備更新計画」を主任技術者主導にする

消耗する職場の特徴

  • 設備は30年以上使用
  • 予算は「壊れてから考える」
  • 更新提案しても「まだ使えるでしょ?」

この環境で事故が起きれば、

「なぜもっと強く言わなかったのか」と

主任技術者が責められます。

正しい体制・権限・運用思想

  • 劣化診断結果を数値・写真で残す
  • 更新優先度をランク分け
  • 中期更新計画(5~10年)を文書化
  • 経営層と定期レビュー

ここで重要なのは、

「言った・言わない」ではなく、記録を残すことです。

主任技術者は、 設備の寿命を延ばす役割ではなく、設備の限界を正しく伝える役割です。

消耗職にしないための体制・権限・運用思想③

「全部自分でやらない」外注利用

  • 消耗パターン
  • 点検立会
  • 試験計画
  • 手順書作成
  • 官庁対応
  • 報告書作成

これをすべて主任技術者が抱える。

あるべき体制・権限・運用思想

  • 定期点検:信頼できる業者に任せる
  • 試験要領:テンプレ化+レビュー役に徹する
  • 官庁対応:事務部門と役割分担
  • 主任技術者は、 作業者ではなく、技術判断者です。

「自分でやった方が早い」は、短期的には正しくても、長期的には確実に消耗します。

消耗職にしないための体制・権限・運用思想④

「NOと言える権限」を明文化する

  • 危険な状態
  • 工期優先
  • コスト優先
  • 現場都合優先

この圧力の中で、主任技術者が“空気を読んで”OKを出すと、事故時にすべて返ってきます。

正しい体制・権限・運用思想

  • 危険判断時の停止権限を文書化
  • 運用変更は主任技術者承認制
  • 緊急停止・是正指示のフロー明確化

これは主任技術者を守るためだけでなく、組織全体を守る体制・権限・運用思想です。

具体例:消耗しない職場/消耗する職場

消耗する例→ 数年で燃え尽きる。

  • 高圧設備1拠点
  • 主任1名
  • 設備老朽化
  • 更新計画なし
  • 夜間トラブルはすべて個人対応

消耗しない例→ 長期的に安定運用できる。

  • 主任+副主任
  • 設備台帳と更新計画あり
  • 点検は外注、判断は主任
  • 異常時は複数人で対応
  • 技術判断が尊重される文化

結論:主任技術者は「体制・権限・運用思想次第で天国にも地獄にもなる」

電気主任技術者は、 本来「尊重されるべき専門職」です。

それが消耗職になるのは、

  • 個人の資質不足ではなく
  • 組織側の体制・権限・運用思想ミス

です。主任技術者を引き受けるときは、仕事内容だけでなく、

  • 体制
  • 権限
  • 更新計画
  • 外注

ここまで含めて見てください。

最後に(アラサー・アラフォー技術者へ)

電気主任技術者は、 自分をすり減らすための役職ではありません。

正しく体制・権限・運用思想を構築すれば、

  • 技術者としての格が上がり
  • キャリアの幅が広がり

長く食える武器になります。

「消耗する前に、体制・権限・運用思想を見直す」

それが、主任技術者という仕事と

長く付き合うための、最も重要な視点です。

電気主任技術者の仕事についてと現行制度と現実の乖離についても書きました。お時間ある時にどうぞ。

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