―「PLCが主役になれない世界」で、どう価値を出すか―
はじめに
「PLC屋は特高では通用しない」と言われる理由
近年、特別高圧受変電設備(以下、特高)を取り巻く環境は大きく変わってきました。
- デジタル変電所
- IEC61850
- IED・BCUの高度化
- 監視制御の統合
- データセンターや再エネ案件の急増
こうした流れの中で、
PLCエンジニアが特高分野に関わる機会も確実に増えています。しかし同時に、こんな声もよく聞きます。
- 「特高ではPLCは主役になれない」
- 「PLC屋は結局、補助要員」
- 「電力屋の世界は別物」
これは半分正しく、半分間違いです。
そして重要なのは――
この構造を理解しているかどうかで、将来の立ち位置が決まるという点です。なぜPLCは特高の“中枢”になれないのかまず現実を直視しましょう。
特高設備の本質は「保護」と「責任」
特高設備において最も重要なのは、
- 事故を確実に止めること
- 系統を守ること
- 人命と設備を守ること
- 法的責任を明確にすること
です。この役割を担っているのが、
- 保護リレー(IED)
- BCU
- 電気主任技術者
- 保安規程・法制度
であり、PLCではありません。PLCは「制御装置」であって、 「保護装置」ではないのです。
決定的な違い:思想が違う
PLCの目的は「制御」であり、異常時は止まることがある。設計思想は正常動作前提。規格はIEC61131
保護リレーの目的は「保護」であり、異常時は必ず遮断を想定している。設計思想も故障前提で設計されている。規格はIEC61850 / 60255
この違いは、技術では埋まりません。
つまりPLCがどれだけ高性能になっても、特高の中枢にはなれない構造なのです。
それでもPLC屋が「不要」になるわけではない。ここが重要なポイントです。
PLCは中枢にはなれません。しかし、「いなくなる」こともありません。
むしろ今後は、PLC屋の価値が“別の場所”で急激に上がるというフェーズに入っています。
PLC屋が生き残る3つのルート
① IEC61850が分かるPLC屋になる(最重要)
これが最も現実的で、かつ価値が高いルートです。なぜ重要か?
- 電力屋は通信が苦手
- IT屋は電力が分からない
- 両方わかる人が圧倒的に少ない
IEC61850は「電力×IT」の境界領域です。
- GOOSE
- MMS
- Station Bus / Process Bus
- VLAN
- 冗長構成
- 時刻同期(PTP)
これらを 「PLC的な視点」で理解できる人は、現場ではほぼ存在しません。
つまりあなたは、PLC屋 × 電力屋の通訳者になれるのです。
② PLC+SCADA+特高をつなぐ人になる
特高設備は今後ますます「見える化」されます。
- 電力データ
- 設備状態
- 異常ログ
- 運用履歴
これらは最終的に
- SCADA
- DCS
- EMS
- クラウド
に集約されます。
ここで必要なのが、
✔ PLCのデータ構造が分かる
✔ IEDの意味が分かる
✔ 上位とのつなぎ方が分かる
という人材です。
このポジションは、 重電メーカー・データセンター・SIerのすべてで不足しています。
③ 「やらない判断」ができるPLC屋になる
実はこれが一番評価されます。
特高の現場では、こう言える人が必要です。
「それはPLCでやるべきではありません」
「そこから先は保護リレーの領域です」
「責任分界を切りましょう」
この判断ができるPLC屋は、ほとんどいません。
なぜなら多くの人は、PLCで何でもやりたがる技術で解決しようとする。責任の境界を意識しない
しかし特高では逆です。
👉 やらない判断こそが、最も高度な技術判断
逆に「やってはいけないPLC屋」の典型例
これははっきり言えます。
❌ PLCで保護をやろうとする
❌ IEDを「ただのI/O装置」と考える
❌ 電力の事故責任を軽視する
❌ IEC61850を通信規格だと思っている
❌ 「PLCなら何でもできる」と言う
こうなると、現場では一気に信用を失います。
将来、PLC屋はどうなるのか?
結論はこうです。
PLC屋は減らない。ただし“役割が変わる”。
・制御屋 → 価値が下がる
・統合屋 → 価値が上がる
・翻訳者 → もっと価値が上がる
つまり、「PLCを使える人」ではなく「PLCを使うべき場所と、使ってはいけない場所を判断できる人」が生き残ります。
まとめ:PLC屋が特高で生き残るための指針
✔ PLCは主役にならない
✔ だが、必要不可欠な脇役であり続ける
✔ IEC61850を理解する
✔ 電力側の論理を尊重する
✔ 責任境界を意識する
✔ “やらない判断”ができる
そして何より大切なのは――
「PLC屋である前に、システム屋であれ」ということです。



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