電気主任技術者が「辞めたくなる職場」の共通点

――なぜ優秀な人ほど現場から離れていくのか

はじめに:辞める理由は「能力不足」ではない

電気主任技術者が職場を去るとき、

その理由が「知識不足」や「能力不足」であることは、ほとんどありません。

むしろ実態はその逆で、真面目で責任感が強く技術的にも勉強熱心で、現場を理解しようとする人ほど先に疲弊していきます。

では、彼らはなぜ辞めてしまうのか。

そこには、いくつか共通した「職場の構造的問題」が存在します。

「判断だけ丸投げ」される職場

「判断だけ丸投げ」される職場。最も多いのがこのパターンです。

「最終判断は主任さんでお願いします」

「主任の判断ということで…」

「万一のときは主任責任で…」

一見、権限を与えているようで、実態は責任の押し付けです。

・設計の検討は他部署

・仕様はメーカー主導

・工程も予算も既に決定済み

・でも最後のOKだけは主任に求める

この状態では、電気主任技術者は「決めているようで、何も決められない立場」になります。

しかも、事故が起きた場合は――「判断したのは主任」という扱いになる。

これを繰り返せば、「この職場にいても守られない」と感じるのは自然な流れです。

技術的な相談が“形式的”になっている職場

次に多いのが、相談は来るが、結論は決まっている。意見を言ってもスケジュールで押し切られる

「参考意見として伺いました」で終わるというケースです。

このタイプの職場では、主任技術者は次第にこう感じ始めます。

「聞いているだけで、聞く気はない」

「責任逃れのために名前を使われている」

こうなると、技術者としての誇りが削られていきます。最初は協力的だった人ほど、 やがて発言しなくなり、最終的には距離を置くようになります。

「分からない」と言えない空気がある

電気主任技術者は“何でも知っている存在”ではありません。

しかし現場では、

「主任なんだから分かるでしょ」

「それ、知らないんですか?」

「前の主任は知ってましたよ」

といった空気が無意識に流れがちです。結果として、

分からないことを聞けず、不安があっても黙ってしまう。そして自己判断で抱え込むという、最も危険な状態になります。これは本人の問題ではなく、職場の空気がそうさせているのです。

事故が起きたときだけ前に出される

これも非常に多いパターンです。

平常時

→ 存在感が薄い

→ 意見はあまり聞かれない

トラブル発生時

→ 「主任はどう考えてるんですか?」

→ 「責任者ですよね?」

この扱いを何度も受けると、「普段は無視されて、責任の時だけ前に出される」という強い不信感が生まれます。やりがいどころか、「いつ爆弾を押し付けられるか分からない役」になってしまいます。

技術の進歩に対する理解がない

最近の設備は、デジタル化に通信化そしてブラックボックス化が急速に進んでいます。

にもかかわらず、勉強する時間が与えられない。研修費が出ない。「今まで通りでいいでしょ」と言われる。こうした環境では、主任技術者は不安しか残りません。

特に怖いのは、「分からないまま責任だけ負う構造」です。これが続くと、「ここにいても自分を守れない」と判断し、離職に繋がります。

評価基準が「何も起きなかったか」だけ

電気主任技術者の仕事は、成果が見えにくい仕事です。

事故を未然に防ぎ危険な設計を止める。無理な運用を是正する。しかしこれらは「起きなかった」ことであり、評価されにくい。結果として、何もしない人と同じ評価となり口出しすると煙たがられる。そして責任だけは重いという状況が生まれます。

これでは、やりがいを感じるのは難しいでしょう。

「代わりはいくらでもいる」という扱い

これが最も致命的です。

実際には電気主任技術者は不足しています。

しかし現場レベルでは、「資格持ってる人なら誰でもいい」や「外注すればいい」さらには「とりあえず名前があればいい」という扱いをされることがあります。

この瞬間、技術者としての誇りは完全に折れます。

まとめ:辞めたくなる職場の共通点とは

ここまでを整理すると、共通点は非常にシンプルです。

✔ 責任だけが重い

✔ 判断材料が与えられない

✔ 技術を尊重されない

✔ 孤立している

✔ 成長の実感がない

✔ 守ってくれる人がいない

こうした環境では、どれだけ志のある技術者でも長くは続きません。

最後に:辞めるのは「逃げ」ではない

最後に強調したいのはここです。

電気主任技術者が職場を去るのは、決して無責任だからではありません。むしろ、

  • 無理な構造に気づいた
  • 自分を守る判断ができた
  • 技術者として健全だった

というケースがほとんどです。そして本来、現場が考えるべきなのは「なぜ辞めたのか」ではなく

「なぜ辞めたくなる構造になっていたのか」です。

そこに気づくことが電気主任技術者の定着更には設備の安定稼働につながるはずです。

特別高圧受変電設備の技術者として電気主任技術者と関わりながら、業界のあれこれを記事にしています。お時間ある時に以下の記事もどうぞ。

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