AIの進化によって、営業の仕事は確実に変わりつつあります。
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仕様書の要約
社内への振り分け
こうした業務は、すでにAIが担える領域になりました。では、メーカー営業は不要になるのか?
答えはNO。ただし“姿”は変わるです。今、問われているのは「営業とは何か」という定義そのものです。
旧来のメーカー営業の定義
従来のメーカー営業は、こう定義されていました。
- 窓口になる
- 受注を取る
- 見積を回す
- 契約をまとめる
この役割は、「社外と社内をつなぐ人」でした。しかし現実には、
- 技術は分からない
- 現場は見ない
- 判断もしない
- 結果として、
「情報の中継点」になってしまうケースも多い。この“中継点型営業”は、AIが最も得意とする仕事と重なります。つまり旧定義の営業ほど、AIに近い存在なのです。
AI時代のメーカー営業とは何者か?
AI時代のメーカー営業は、「伝える人」ではなく「翻訳する人」になります。
顧客側の言葉:「とにかく止まらない設備が欲しい」
技術側の言葉:「二重化構成にして、MTTRを短縮しろ」
この二つは、同じ意味でもそのままでは通じません。ここを
- 技術者に伝わる形に翻訳する
- 顧客に分かる言葉に戻す
この役割こそが、AI時代に残るメーカー営業です。
営業は「売る人」から「設計に参加する人」へ
AI時代の営業は、単なる“販売担当”ではありません。
新しい定義:メーカー営業とは顧客の要求を、自社製品で実装できる仕様に落とす人間であるです。
何を売るか →どう使われるか
価格はいくらか →どんなリスクを背負うか
納期はいつか →現場は本当に回るか
こうしたことを受注前に考える人になります。これは、「営業」+「システム設計」のハイブリッド職です。
AIにできない“メーカー営業の中核業務”
では、何がAIにできないのか。
① 現場の空気を読む
- 設備の汚れ
- 作業員の動線
- 責任者の態度
「本当は怖がっているポイント」これは数値化できません。
② 仕様に出ない要求を拾う
- 「止まったら怒られる」
- 「前のメーカーに嫌な思いをした」
- 「新しいことはやりたくない」
これらは仕様書に書かれない仕様です。
③ 社内を動かす
- 設計を説得する
- 工場と交渉する
- 上司を説き伏せる
この「人間を動かす」行為は、AIにはできません。
AI時代のメーカー営業に必要な能力
再定義されたメーカー営業に必要なのは:
① 技術を“使えるレベル”で知る
- 型番暗記ではない
- 原理を知る
- 使いどころを知る
- 限界を知る
② 現場を知る
- どこが壊れるか
- どこで事故るか
- どこで怒られるか
③ 顧客の立場で考える
- この仕様で本当に安心か
- これは将来困らないか
④ AIを部下として使う
- 見積下書き
- 資料作成
- 過去事例検索
これを自分の仕事を奪う敵ではなく“部下”として使う営業が生き残ります。
メーカー営業は「信用装置」になる
AI時代において、メーカー営業の本質はこう変わります。
- この会社は信用できる
- この人が言うなら大丈夫
という“信用の担保”になること。設備は止まれば事故になる。電気は止まれば責任問題になる。
だから顧客はスペックではなく「人」を見ます。この構造は、AIが進化しても変わりません。
まとめ
AI時代のメーカー営業とは何か?
メーカー営業の再定義は、こうです。
メーカー営業とは
顧客の不安を、技術で処理できる形に変換する人間です。
- 売る人ではない
- 運ぶ人でもない
- 転送する人でもない
- 設計と顧客の間に立つ、
- 責任を負う翻訳者
です。もし営業が
- 現場に行かない
- 技術を知らない
- 顧客と向き合わない
のであれば、その営業はAI時代の営業ではありません。それは「過去の職業」です。
AI時代のメーカー営業は、技術を持った営業。現場を知る営業。信用を背負う営業になります。
営業は、楽になるのではありません。むしろより“人間らしい仕事”に濃縮されるのです。


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