〜デジタル変電・外資系データセンターで迷わないための実務指針〜
デジタル変電設備や外資系データセンター案件に関わると、必ず直面するのが
「この信号はSAS側?それともSCADA側?」
という問題です。
一見すると単純なようで、実際の設計・見積・スコープ調整においては非常に重要であり、ここを曖昧にしたまま進めると後工程で必ず破綻します。
本記事では、SASシグナルリストとSCADAポイントの違いと、実務での切り分け方を体系的に整理します。
SASについては以下の記事で詳しく書いております。SASの構造からIEC61850の関係まで触れています。そもそもSASって?という方はぜひどうぞ
そもそも何が違うのか(前提整理)
まず最初に押さえるべきは、SASとSCADAの役割の違いです。
SAS:変電所内で「動かす・守る」ためのシステム
SCADA:遠方から「見る・管理する」ためのシステム
この違いが、そのまま信号の切り分けに直結します。
基本原則:まずはここで判断する
実務では、以下のシンプルなルールでほぼ判断できます。
■ 原則①:設備を“動かす/守る”信号はSAS
トリップ
インターロック
操作指令(Close/Open)
保護動作
👉 これらはすべてSAS(IED)で完結させる
■ 原則②:設備の“状態を知らせる”信号はSCADA
遮断器状態(Open/Close)
アラーム
計測値(電圧・電流・電力)
機器状態(異常・正常)
👉 SCADAは「結果を受け取るだけ」
■ 原則③:迷ったら「リアルタイム性」で判断
ミリ秒で必要 → SAS
秒単位でOK → SCADA
これはかなり有効な判断軸です。
実務での切り分け(具体例)
ここからが本題です。
実際のSASシグナルリストとSCADAポイントの切り分けを具体的に見ていきます。
① 遮断器(CB)まわり
■ SAS側(必須)
CB Close command
CB Trip command
Interlock permissive
Breaker failure(50BF)
Sync check(25)
👉 理由:操作・保護に直結するため
■ SCADA側
CB Open status
CB Close status
Spring charged
SF6 alarm
Trip circuit fail
👉 理由:状態監視で十分
💡実務ポイント
CBの「操作」はSAS、「状態」はSCADAと覚えると整理しやすいです。
② 保護継電器(IED)
■ SAS側
保護動作信号(50/51/87/64など)
トリップ出力
GOOSE送受信信号
👉 完全にSAS領域(リアルタイム)
■ SCADA側
Protection operated indication
Protection alarm
Event summary
👉 あくまで“通知”のみ
💡重要
SCADAから直接トリップさせる設計は基本NG(特に外資DC)
③ 計測値(Metering)
■ SAS側
保護用電流・電圧(IED内部)
差動電流などの演算値
👉 保護ロジックに使用
■ SCADA側
電流(A相/B相/C相)
電圧(線間・相電圧)
電力(kW/kVar)
周波数
👉 監視・トレンド用途
💡実務ポイント
同じ「電流」でも用途で分かれる
→ 保護用はSAS、表示用はSCADA
④ 変圧器(ETOS・付属機器)
■ SAS側
Buchholz trip
Winding temperature trip
Pressure relief trip
👉 トリップに関わるものはSAS
■ SCADA側
Oil level low
Winding temp alarm
Fan fail
Common alarm
👉 状態監視系
💡現場あるある
ETOS信号は「全部入れがち」だが、
👉 トリップ系と監視系で明確に分けるのが重要
⑤ AC/DC電源盤
■ SAS側(必要最小限)
重要な電源喪失によるインターロック
■ SCADA側
AC fail
DC fail
MCB trip
Fuse fail
👉 基本はSCADAで十分
よくある設計ミス
❌ ① 全信号をSASに入れる→ ネットワーク負荷増大・設計過多
❌ ② SCADAに制御を持たせる→ 遅延・信頼性低下(事故リスク)
❌ ③ 将来用を全部入れる→ I/O不足・コスト増
❌ ④ Node設計と切り分けが連動していない→ IEC 61850設計が破綻
外資系データセンターでの考え方
外資系DCでは、この切り分けが非常に厳密です。
基本思想
- トリップはIEDで完結(GOOSEまたはハード)
- SCADAは“閲覧専用”に近い
- SASで閉じる設計が前提
よくある仕様要求
“No SCADA-based trip”
“All protection shall be independent of SCADA”
“Hardwired trip preferred”
つまり、SCADAに頼る設計はNGという前提で進みます。
シグナルリスト作成時の実務フロー
実務的には、以下の順番が非常に有効です。
Step1:SAS信号を先に確定→ 保護・制御に必要な最小構成
Step2:SCADAポイントを抽出→ 表示・監視に必要なものだけ追加
Step3:重複を整理→ SAS→SCADAに流すものを明確化
Step4:スコープを分離
SAS:電気ベンダー
SCADA:IT/上位システム
まとめ
SASシグナルリストとSCADAポイントの切り分けは、単なる整理ではなく、「設計思想そのもの」です。
改めて整理すると、
SAS:設備を守るための信号(リアルタイム・制御)
SCADA:設備を知るための信号(監視・可視化)
そして最も重要なのは、「SASで完結すべきものを、SCADAに持ち込まない」この一線を守れるかどうかが、設計品質を大きく左右します。
最後に(実務者向け)
設計協力段階では、とりあえずSASに広めに入れる。詳細設計で削るという戦略も現実的です。
ただし、トリップ系は絶対にSAS。SCADAは“結果のみ”この軸だけはブレさせないことが重要です。



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