この記事を読めばわかること
本記事では、VE(Value Engineering:バリュー・エンジニアリング)提案の基本概念から、一般的なコストダウンとの違い、具体的な実施プロセス、公共工事における位置づけ、電気設備・特高変電分野における具体例までを体系的に整理する。
「VE提案とは何か」
「なぜ重要なのか」
「どのような場面で有効なのか」
について、理解できる構成とする。
1. VE提案の基本的な考え方
VE(Value Engineering:バリュー・エンジニアリング)提案とは、**「必要な機能を、最小のライフサイクルコストで実現するための体系的手法」**を指す。単なるコストダウン施策とは異なり、機能(Function)と価値(Value)を軸に、より合理的かつ最適な代替案を示す技術的行為である。
VE の基本式は次のとおりである。
- Value(価値)= Function(機能)/ Cost(コスト)
- この式に示されるように、VE 提案は以下を目指す手法である。
- 機能を落とさず、コストを下げる
- コストを変えず、機能を高める
- 機能向上とコスト最適化を同時に実現する
したがって VE 提案とは、費用削減ではなく、提供すべき“真の機能”を再評価し、価値を最大化する提案行為と位置づけられる。
2. VE提案と一般的なコストダウンの違い
しばしば VE は価格を下げる施策と誤解されるが、本来の目的は価値向上である。一般的なコストダウンとの主な違いは以下の通りである。
| 項目 | VE提案 | 一般的なコストダウン |
| 目的 | 価値向上・機能最適化 | 価格引き下げのみ |
| アプローチ | 機能分析・代替案の創出 | 削減・節約中心 |
| 評価軸 | LCC・品質・安全性・保守性 | イニシャルコストのみ |
| 主体 | 技術者・専門部署主導 | 購買・営業などが主導 |
| 成果 | 価値創出型の改善案 | 短期的なコスト削減 |
VE 提案は**技術的根拠を有する“価値創出型提案”**である点に大きな違いがある。
3. VE提案の実施プロセス
VE 提案は、体系的な手順に基づき実施される。
① 機能定義(Function Analysis)
設備や工事に求められる本質的機能を明確化する。目的と手段の混同を防ぎ、必要機能と付加的機能を区分する。
② 現状案の分析
現行設計における過剰品質、冗長性、施工性、維持管理性などを多角的に評価する。
③ 代替案の創出
機器仕様、材料、工法、レイアウト等の代替案を複数検討する。
例:電気設備
鉱油変圧器 → 大豆油変圧器(難燃性向上・防火設備簡素化)
多芯ケーブル → デジタル化(GOOSE通信)で省配線化
大型ケーブル敷設 → 母線の活用による工期短縮
④ 価値評価
安全性・信頼性・工期・LCC・環境性などの観点から最適案を選定する。
⑤ 提案書作成
代替案の技術的妥当性、経済性、施工性、環境性などを定量・定性評価し、明確な根拠をもって提示する。
4. 公共工事における VE提案の位置づけ
公共工事では、総合評価方式や設計・施工一体型方式の普及に伴い、VE 提案は重要な評価項目となっている。特に以下が評価ポイントとなる。
- 設計図書の課題解決
- 現場条件に応じた合理案
- 施工性向上と工期短縮
- 維持管理性・更新性の改善
- LCC を意識した技術的代替案
特高変電設備においては、IEC 61850 を活用した省配線化、油種変更による建屋簡素化、レイアウト改善による土工量削減など、技術者の専門性が直接 VE 効果へつながるケースが多い。
5. なぜ近年 VE提案が注目されるのか
① 資材価格高騰
銅、鋼材、ケーブル類、変圧器油などの価格上昇により、従来設計では予算超過リスクが高まっている。
② 人員不足・熟練工不足
施工性の高い VE 提案は、限られた人員で工期を守る上で不可欠である。
③ GX・環境配慮要求の増大
大豆油変圧器、省エネ設備、廃棄物削減など、環境面での価値向上も VE の重要要素となった。
④ 維持管理・更新の時代
LCC最適化を考慮した VE は、長寿命化計画や更新合理化と相性が良い。
6. 電気設備・特高変電分野における VE提案の具体例
- 大豆油変圧器の採用 → 難燃性向上、防火設備の簡素化、環境負荷低減
- IEC61850活用(GOOSE 通信)による省配線化 → ケーブル削減、施工性向上、変更管理の柔軟化
- レイアウト見直し → 配線量削減、土工量減、保守性向上
- 過剰仕様の適正化 → 冷却方式、短絡電流耐量、絶縁レベルの見直し
- 工法の転換 → 大型ケーブルから母線へ、ダクトからラックへ等の最適化
7. VE提案の意義
VE 提案は単なる値引きではなく、技術者の専門性を生かした価値創造の手法である。
- 顧客価値の最大化
- コストと品質の最適化
- 安全性・信頼性の担保
- 維持管理の効率化
- 企業の競争力向上
これらすべてを両立しうるため、VE 提案はプロジェクトの成功要因のひとつと言える。
まとめ
VE 提案とは、**機能を軸に価値を最大化する“技術者のための体系的改善手法”**であり、公共工事・プラント・電気設備といった多様な領域で欠かせない取り組みとなっている。資材高騰、人手不足、GX の要請が進む中、VE 提案は設計・施工・維持管理の全工程において、より一層の重要性を持つ技術的アプローチである。



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