そもそもPLCとは何か?

「そもそもPLCとは何か?」をテーマに、歴史的背景から世界と日本(国内)の特色、そしてドイツ式・アメリカ式の設計思想の違いまでを包括的にまとめた解説文です。

そもそもPLCとは何か — 産業オートメーションを支える頭脳の進化史

PLCの定義と役割

PLC(Programmable Logic Controller:プログラマブル・ロジック・コントローラ)とは、工場やプラントなどの制御システムの中心となる制御装置である。

リレーやタイマ、カウンタなどを組み合わせて行っていたシーケンス制御(順序制御)を、ソフトウェア(プログラム)で実現できるようにしたもので、電気・機械・計装分野の自動化に欠かせない存在だ。

PLCは、入力部に接続されたスイッチやセンサ信号を受け取り、内部プログラムに基づいて判断を行い、出力部のリレー・電磁弁・モータなどを制御する。

この「入力 → 演算 → 出力」の基本サイクルがPLCの核心であり、極めて高い信頼性・耐環境性を備えていることが、一般的なコンピュータとの大きな違いである。

スキャンの概念に関しては昔描いたのでそちらもどうぞ

PLC誕生の歴史 — リレー制御からソフト制御へ

PLCは1960年代後半、アメリカの自動車産業から生まれた。

当時の工場では、数百から数千ものリレーを組み合わせて制御を行っており、生産ライン変更のたびに膨大な配線工事が必要だった。

この非効率を解消するため、**「リレー回路をプログラムで置き換える」**という発想が生まれた。

1968年、米国General Motors社が「リレーを使わずに制御でき、簡単にプログラム変更できる装置」を要求仕様として提示。

これに応えて**Modicon社(現シュナイダーエレクトリック)が開発したのが世界初のPLC、“Modicon 084”**である。

その後、1970年代にはAllen-Bradley(現Rockwell Automation)やGEが参入し、PLCはアメリカを中心に急速に普及した。

ヨーロッパではSiemensやTelemecanique(現Schneider)が発展をリードし、日本では1970年代中盤から三菱電機、オムロン、日立、富士電機などが国産化を進めた。

世界と国内のPLC文化の違い

PLCは各国の産業構造と技術文化の違いを反映して発展しており、アメリカ式と**ドイツ式(ヨーロッパ式)**で設計思想や使い方に大きな特徴がある。

(1) アメリカ式PLC

発祥地:GMや自動車産業に端を発する。

代表メーカー:Rockwell Automation(Allen-Bradley)、GE、Modiconなど。

特徴:

現場保守性重視。操作員や保守員が直接理解できるリレー回路的なラダー図中心の思想。

シンプルなI/O制御と柔軟なアドレス指定。

生産ラインごとに現場で即座に改修できる運用重視の設計。

英語圏らしい「実践的・柔軟・即応型」文化が反映。

(2) ドイツ式(ヨーロッパ式)PLC

発祥地:プロセス産業・重工業・自動車製造ラインの自動化が進んだドイツ。

代表メーカー:Siemens(S5、S7シリーズ)、Beckhoff、WAGO、Phoenix Contactなど。

特徴:

システマチックで構造化された設計思想。

**工程全体の階層制御や通信統合(PROFIBUS、PROFINETなど)**に強い。

**関数ブロック(FBD)や構造化テキスト(ST)**を多用し、ソフトウェア工学的な設計を志向。

「設計=上流工学」「製造=標準化・自動生成」というエンジニアリング志向の文化。

この違いを一言で表すなら、

アメリカ式=“現場の即応性重視”

ドイツ式=“体系化・モデル化重視”

である。

日本のPLC文化の特徴

日本のPLC文化は、アメリカ式の現場主導とドイツ式の体系主義の折衷として発展してきた。

1970〜80年代においてはアメリカ由来の「リレー置換型ラダー」が主流だったが、1990年代に入り「生産ライン全体の最適化」や「ネットワーク化(CC-Link、DeviceNet、EtherNet/IP)」が進み、構造化プログラムや通信統合が重視されるようになった。

特に三菱電機、オムロン、富士電機などは、日本の製造現場の要求(小型・高速・多機能・高信頼性)に合わせて、独自のファームウェア設計やネットワーク規格を発展させた。

一方で、海外メーカーとの協調や国際標準(IEC 61131-3)への対応も進み、近年はラダー・FBD・STなど多言語混在プログラミング環境が一般化している。

近年の動向 — ソフトウェア化とデジタル統合

近年のPLCは、単なる入出力制御装置ではなく、産業IoT(IIoT)やデジタルツイン環境の一部として進化している。

仮想PLC(vPLC):ハードウェアを持たず、産業PCやクラウド上でPLC機能を仮想的に実行。

オープンプラットフォーム化:CODESYS、Siemens TIA Portal、MELSOFTなど、上位システム連携を容易に。

デジタル変電・プロセス制御分野では、IEC 61850やOPC UAなど通信レイヤ統合が進み、PLCの役割が「制御」から「情報処理」へと広がっている。

この流れの延長には、PLCとIT(クラウド、AI、MES)との融合、すなわち「制御のデジタルトランスフォーメーション(DX)」がある。

まとめ — 世界のPLCは文化の鏡

地域設計思想特徴主なメーカー
アメリカ実務・現場即応型シンプルで柔軟、保守容易Allen-Bradley, Modicon, GE
ドイツ・欧州構造・体系型モデル化と通信統合重視Siemens, Beckhoff, WAGO
日本折衷型・現場主導小型・高機能・高信頼性三菱電機, オムロン, 富士電機

PLCは、単なる機械制御装置ではなく、各国の“ものづくり文化”を映す鏡でもある。

そして、今後のPLCは「制御の枠」を越え、サイバー・フィジカル融合の中核として進化を続けていくだろう。

だからPLCの時代が終わることは無い

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